会計士の履歴書
畠中 貴司

有限責任 あずさ監査法人

アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部 ディレクター

畠中 貴司

はたけなか たかし

監査法人には自分が目指す姿に合わせて様々な経験を積める環境やキャリアパスが用意されている

1980年代生まれ 兵庫県出身 東京都在住

一橋大学 商学部 卒業

畠中 貴司

01

キャリアサマリー

2002

朝日監査法人(現 有限責任 あずさ監査法人)入社 監査事業部に所属

2009

大手自動車メーカーへ出向 連結決算業務に従事

2010

帰任に伴い、IFRS事業部(現 アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部)に異動

2015

KPMGタイランドへ赴任 アドバイザリー部門に所属し、現地日系企業を支援

2018

現所属事業部へ帰任

本記事はすべてインタビュー当時の内容です。

所属・職位に変更があった場合でもインタビュー当時のものを記載しています。

中学生の頃から新聞の経済面に興味があり読んでいた私は、大学進学にあたり、漠然と公認会計士の職を目指すようになりました。もっとも、その時点で公認会計士の仕事の中身をきちんと理解していたわけではなく、田舎育ちで車好きの自分が早く車を買うための選択でもありました。

監査法人に入社後は、ハードワークで有名な監査チームに所属しつつ、繁忙期が終わるとゴルフに打ち込むという日々を過ごしました。しかし、仕事に忙殺される日々に疑問を感じており、ちょうどその時に事業会社への出向を打診され、二つ返事で受諾することにしました。

事業会社では連結決算グループのメンバーとして、全世界500社を超えるグループの連結財務諸表の作成側での仕事を経験し、自分の現在のアドバイザリー業務の礎となっています。

出向先での経験を帰任後も活用すべく、当時法人内で立ち上げ段階にあったIFRSのアドバイザリー部門に帰任しました。当時の私は、アドバイザリー業務の経験はほとんどない中、立ち上げ直後の部門で仲間とともに奮闘する日々を過ごしました。

アドバイザリー部門で数年を過ごすうちに、グローバル対応力の必要性を感じるようになり、海外赴任を希望するようになりました。運良く、KPMG(監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームのグローバルネットワーク)タイのアドバイザリー部門に赴任することができ、現地メンバーとともに現地日系企業の業務改善を支援しました。

昨年帰任し、現在はアカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部に所属しています。

02

監査法人に入社することを選択したきっかけ

私が公認会計士試験(当時の2次試験)に合格した頃は、まずは監査法人に入るのが通常の進路だったため、監査法人という選択肢以外は特に考えてはいませんでした。
大学の先輩や4大法人の採用説明会を回り、自由闊達で従業員に優しい雰囲気を感じた朝日監査法人に入社することにしました。当時の事務所が、大学や当時の家からなじみの深かった中央線沿線であったことも決めた理由の1つでした。
正直、当時の私は、現在の合格者の皆さんほどの情報や選択肢も持っておらず、進路の選択はそれほど深く考えたものではありませんでした。
ただし、私の経験から言えることは、監査法人で積める経験は将来どんな仕事をする場合においても十分に魅力的であり、「とりあえず監査法人」という選択も間違いなく正解の1つであるということです。

畠中 貴司さん

03

監査法人での仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在は、アドバイザリー部門のシニアマネジャーとして、主に財務経理部門の業務改革プロジェクトのプロジェクトリーダーを担当しています。
私が所属している、アカウンティング・アドバイザリー・サービス(AAS)事業部は、「CFO領域に関するあらゆる課題を解決する」というミッションのもと、CFOの課題に対応できる体制を構築しています。私はその中でも、Process & Information(P&I)という、経営管理及び財務経理機能の改革はもちろん、事業戦略の策定やIT改革に至るまで、幅広い業務を行っているグループに所属しています。
AAS事業部は現在300名弱の組織で、監査事業部よりは小規模ですが、監査を経験した会計士のほか、コンサルティングファーム出身者や、一般事業会社からの転職者から構成されています。異なるバックグラウンドを持つメンバーがそれぞれの専門性を発揮しながら、クライアントのニーズに応えるべく仕事をしており、刺激を受けながら業務にあたることができています。
また、監査法人外で同じグループのKPMGコンサルティング社やKPMG FAS社と共同で、大規模なシステム導入や事業統合の支援など、より幅広い分野の業務に携わることもあります。

私は監査業務を経て、現在はアドバイザリー業務に従事していますが、監査法人には他にも様々なキャリアを歩んでいるメンバーや、監査法人の外で活躍することを選択する人もいます。どのようなキャリアを選択するにしても、監査法人には、自分が目指す姿に合わせて様々な経験を積める環境やキャリアパスが用意されていると思います。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

自分自身には特別な強みはないと思っていますが、強いて言うと、「柔軟性」「探究心」「理解力」と思います。

アドバイザリー業務では、新しいクライアントと仕事をすることが多く、また、プロジェクトの現場では様々な課題に直面し、状況は日々変わります。プロジェクトを円滑に、効果的に進めて行くために、「柔軟性」という要素は非常に重要だと感じています。

また、昔からそうだったのか、監査を経験してさらにそうなったのか、問題を発見した時に、「そもそも、なぜそうなったのか?」をよく考える傾向にあると思います。アドバイザリー業務はクライアントの課題の本質を理解し解決していく仕事のため、「探求」してしまうクセは活かされているのかもしれません。

もう1つ、クライアントから入手する資料や話を理解する力も監査で培われたものだと思います。一方で、理解した課題を解決し、アウトプットすることが現在の仕事なので、まだまだ知識や経験を得て、成長しなければならないと感じています。

畠中 貴司さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

特別なエピソードではありませんが、私のキャリアの中から、それぞれの業務で得た経験を書きます。

監査事業部時代にメインで担当していたクライアントは、非常にエネルギッシュな会社で次々と新しい事業に進出し、成長を遂げている会社でした。そのため、管理体制が整わないまま新規事業が急拡大してしまい、気が付いたら経理処理が適切ではなかったり、数字の検証が困難になってしまったりしていることも度々ありました。そのような状態から経理部門のメンバーと一緒になって取引実態を確認し、経理処理ルールを再構築するということを多く経験し、とてもやりがいを感じていました。
他方、優良企業の上場子会社を担当していたこともありました。そのクライアントも非常に優良企業で、メインのクライアントとは違った意味で勉強になりました。最終的には親会社と監査人を統一するということで、業務を継続することができなくなりましたが、最後にクライアントの目上の方から、「畠中さんに会えて良かった」と言っていただいたことは、意外だったので印象に残っていますし、自分の中でも自信になりました。

事業会社に出向した際は、最初は「こんな一流企業で自分は何か役に立つのだろうか」と思っていました。しかし、決算を重ねて行くうちにメンバーとも打ち解け、テクニカルな会計論点の検討や新しい会計基準への対応をリードするようになりました。監査だけのキャリアに不安を覚えていましたが、会計士の知識や経験は法人外でも活かせることが再確認できました。

その後、アドバイザリー部門に異動しましたが、業務経験がほとんどなかったため、最初はとても苦労しました。特に、「プロジェクトやクライアントを動かす」といった点では監査業務とは異なる要素が求められました。
そういったプロジェクト管理のスキルも試行錯誤を経て習得していき、振り返ると、アドバイザリー部門での経験はハードスキル、ソフトスキルの両面で私を大きく成長させてくれたと強く感じています。
また、アドバイザリー業務は、プロジェクトの成功という「結果が出る」ため、監査業務とは違ったやりがいが得られることも醍醐味です。

海外赴任先のタイでは、現地日系企業の経営課題を理解し、業務改善を提案してタイ人のメンバーと一緒になって改善を支援するという仕事をしていました。日系企業の現地でのオペレーションの難しさを垣間見ることができ、また、いくつかのクライアントから信頼していただいて継続的に業務改善を支援できたことはとても貴重な経験となりました。

これまで法人で様々な経験を積ませていただきましたが、それぞれの局面で印象に残る出来事があり、今の自分を形作ってくれていると思います。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

私はキャリアの中でいくつかの転機を経験し、それぞれの業務において最初は必ず壁にぶつかりました。ただ、それぞれにおいて何か特別な発見や手法で壁を乗り越えたわけではなく、地道に新しい業務に必要な知識を習得し、苦労しながら経験を積むことによって、消化してきました。
結果として、そういった経験が自分の糧になっており、業務での悩みは過去の経験を基礎に乗り越えられる!と思うようにしています。

キャリアの面では、公認会計士という職業柄1つの仕事で人生を全うする人の方が圧倒的に少ないですし、私もそれぞれの転機で悩んできました。
その中で自分が成長できると思う選択をしてきた結果、現在の業務に辿り着いています。
私は監査法人の中に身を置きながら環境を変えていますが、その経験を通じて会計士の活躍の舞台は監査に限定されないことを、身をもって感じています。
これを見ている会計士の皆さん、受験生の皆さんもほとんどの人が節目節目で自分のキャリアに悩むことになると思いますが、日々の業務でしっかりした経験を積んでいれば、監査以外の広い世界のいたるところに活躍のチャンスはあると思います。

07

人生の目的と公認会計士という資格

正直、人生の目的といったものは特に持っていませんが、「プライベートも仕事も楽しく」というのが自分のモットーです。その意味では、監査法人に所属しているということは、周囲の人達の能力が高く、向上心が強いといった点で、楽しく仕事ができる環境であると思いますし、実際に私も上司、同僚に恵まれてきたと思います。
また、仕事を通じて様々な企業や人に出会えるのは、監査法人に所属している公認会計士の醍醐味であり、とても刺激的であると感じています。

畠中 貴司さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

将来の夢と言えるほどのものもありません。これからも魅力的な先輩・同僚と楽しく仕事をしながら、家族との時間も大事に過ごしたいと思っています。
業務面では、現在の経営管理の領域でさらに経験を積み、クライアント、CFOからより信頼されるコンサルタントになるべく奮闘していきます。その結果として、現在の事業部で、より責任のある仕事が任されるようになればと思っています。
一方で、監査法人は、今後も法令規制の変更やAI・ロボティクスなどのテクノロジーの進展などによって、その業務が大きく変わっていくものと思います。私は法人の中でも多様なキャリアを歩んだ経験を活かして、監査法人の変革期を牽引できるメンバーでありたいと考えています。
プライベートでは、もう一度ゴルフに夢中になりたいという野望がありますが、きちんと子育てが終わってからと思っています。

畠中 貴司さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

会計士という職業を活かして、貪欲に吸収しましょう。それが自分の将来に必ず役に立ちます。

監査法人で働く会計士のメリットは、多くの企業を実際に見ることができることや、企業のマネジメント層に比較的早いうちに会うことができることです。

監査法人で数年過ごすうちに「監査が合わない、やりがいを見つけづらい」と感じ始める人も実際にはいます。確かに監査手続として書類のチェックばかりではつまらないかもしれませんが、監査を通じて様々な企業のビジネスや経営管理の手法に触れることができることは、監査人として働くことの大きな利点です。
私自身、クライアントのことをとても深く見て、理解しているつもりでしたが、それでもアドバイザリー部門に所属している今は「あのときもっと○○を詳しく見せてもらっておけば良かった」と思うことが多々あります。
日々の業務に忙殺されてしまうことは仕方がないことですが、その中でも心にゆとりを持って、自分の興味のある部分をクライアントに聞いてみる、(クライアントに迷惑をかけないように)資料を依頼してみるというぐらいの余裕を持って仕事ができると良いと思います。

将来、監査を続ける、アドバイザリーに飛び込む、事業会社に転身する、どの場合でもその経験や知識は必ず役に立ちます。月並みですが、自分自身の反省を込めて書いてみました。