
橋本和也公認会計士事務所
代表
橋本 和也
はしもと かずや
問いで組織を動かし、挑戦に、確信を。
1982年生まれ(44歳) 群馬県出身 東京都在住
立命館大学経営学部 2007年合格

01
キャリアサマリー
学校法人大原学園で公認会計士講座租税法講師を担当
公認会計士試験合格
監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)国内監査部門入所
有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー本部GRCユニット異動
グロース上場会社入社 内部監査室立ち上げ
未上場会社(現NASDAQ上場会社)入社 内部監査企画担当
グロース上場会社入社 内部監査室立ち上げ
公認会計士清風会第54期代表世話人就任
公認会計士として監査法人でキャリアをスタートし、会計監査を通じて企業を客観的に捉える視点や、事実と証拠に基づいて考える姿勢を身につけました。その後は大規模な企業組織を対象としたアドバイザリー業務に携わり、さらに外部から企業を支援するだけでなく、組織の中に入り、その変化に継続的に関わりたいとの思いから事業会社へ。現在はグロース市場上場企業で内部監査室長を務めています。
振り返れば、私のキャリアは、会計・監査という専門性を起点に、内部監査、経営、ガバナンス、そして企業価値へと、目の前の問いに導かれながら関心の射程を広げてきた歩みでした。最初から現在地を描いていたわけではありません。人との出会い、新しい仕事、そこで生まれた問いに反応し、その都度一歩を踏み出してきた。その積み重ねによって、想像していなかった景色が見えるようになったことこそ、私のキャリア、そして人生の一つの特徴なのだと思います。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人で得たものは、会計や監査の知識だけではありません。企業を一歩引いた位置から見る視点、複雑な事象を整理する力、何かを判断するときに事実へ立ち返る姿勢。これらは、現在に至るまで私の仕事の土台になっています。
一方、監査に向き合うほど、心の中には別の思いも芽生えていきました。それが、「指摘した、その先まで関わってみたい」というものです。第三者として問題やリスクを見つけ、伝えることには大きな意義があります。ただ、その指摘を受けた組織が何を考え、どう変わり、より良い状態へ進んでいくのか。その過程にも当事者として関わってみたい、と考えるようになりました。
アドバイザリーや事業会社へ活動の場を広げた背景には、この問題意識があります。監査法人を離れることは、監査で培ったものを捨てることではありませんでした。むしろ、その専門性を別の場所に持ち込み、自分がどこまで価値を出せるのかを試してみる。その選択が、現在の内部監査やガバナンスへの関心につながっています。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は上場企業の内部監査室長として、監査計画の策定、個別監査、経営への報告、監査役等との連携など、内部監査機能全般を担っています。ただ、私自身は内部監査を「ルールどおりに仕事が行われているかを確認する機能」だけだとは考えていません。
不備やリスクを発見することはもちろん重要ですが、その先にある「どうすれば会社はもっと良くなるのか」という問いに向き合うところに、内部監査の本当の面白さがあると感じています。現場には現場から見える景色があり、経営には経営から見える景色があります。その双方と対話しながら、組織を横断して物事を捉え、より良い意思決定につながる材料を提供する。内部監査だからこそ担える役割です。
そして、この仕事に深く向き合うほど、関心は内部監査という一つの機能から、その背景にある経営やガバナンス、さらに企業価値そのものへと広がってきました。内部監査は私にとって専門領域であると同時に、より大きなテーマを考えるための起点でもあります。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
自分の強みを一つ挙げるとすれば、異なる立場の人たちの間に入り、「問い」を通じて対話を生み出すことだと思います。公認会計士として企業を外側から見る立場、アドバイザリーとして支援する立場、事業会社の中で内部監査を担う立場。それぞれを経験したことで、同じ事象でも、立つ場所によって見え方や優先順位が大きく異なることを実感してきました。
監査の世界では、正しいことを見極め、伝える力が求められます。しかし実務では、正しさだけで人や組織が動くとは限りません。相手が置かれている状況を理解し、なぜそれが重要なのかをともに考え、次の行動につながるところまで対話する。そこでは「答えを示す力」と同じくらい、「良い問いを立てる力」が重要になります。
経営、現場、監査役等、それぞれが持つ視点をつなぎながら、組織が自ら答えを見つけられる状態をつくること。これまで異なる立場を経験してきたからこそ培われた、自分らしい強みだと考えています。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
仕事をしていて心が大きく動くのは、自分たちの働きかけをきっかけに、相手の表情や言葉が変わり、組織が自ら動き始める瞬間です。内部監査は、ともすると「指摘する側」と「指摘される側」という構図になりがちです。もちろん、問題を的確に捉え、改善すべき事項を明確にすることは重要です。
しかし実務を重ねる中で、私の記憶に強く残るようになったのは、指摘事項の数や内容よりも、監査をきっかけに現場との対話が深まり、「せっかくなら、この機会にここまで変えてみよう」と相手自身から前向きな言葉が生まれた場面でした。そのとき、監査の成果は報告書の中だけにあるのではない、と実感しました。
また、内部監査について講演や外部発信をする中で、「内部監査に対する見方が変わった」と言っていただくことがあります。自分が実務の中で考え、試行錯誤してきたことが、自社を越えて誰かの仕事や組織を少しでも前に進める。その感覚が、今も実務と発信の両方を続ける原動力になっています。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
内部監査に携わる中で深く悩んだのは、「正しいことを伝えること」と「組織が実際に変わること」の間には、想像以上に距離があるということでした。
公認会計士として仕事をしていると、事実を整理し、論理的に問題点を示し、妥当な結論へ導くことを大切にします。ところが実務では、どれほど論理的に正しい指摘であっても、それだけで相手が納得し、行動に移してくれるとは限りません。「これだけ明確に伝えているのに、なぜ動かないのだろう」と考えた時期もありました。
しかし、対話を重ねるうちに、相手には相手の事情や優先順位があり、監査側の論理だけで組織を動かそうとすること自体に無理があるのだと気づきました。それ以降、指摘する前に相手の話を聞き、「何が問題なのか」だけでなく、「どうすれば一緒に前へ進めるのか」を考えることを意識しています。
正しさを捨てたのではありません。正しさを、相手が受け止め、行動できる形へ翻訳する。その視点を得たことが、私にとって一つの大きな転機でした。
07
人生の目的と公認会計士という資格
人生の目的を一言で表すなら、私は「人や組織の挑戦を前に進めること」なのだと思います。これまでは、誰かが新しいことに踏み出そうとしている場面に関わり、その挑戦がより良い形で進むよう支えることに、大きなやりがいを感じてきました。
挑戦には必ず不確実性があります。すべてのリスクをなくしてから進むことはできないからこそ、リスクを見える形にし、問いを立て、対話し、「これなら進める」と思える状態をつくることに意味があります。
その点で、公認会計士という資格は私の人生の目的と深く結びついています。会計や監査の知識だけでなく、事実に基づいて考える力、物事を構造化する力、信頼を守るための倫理観は、誰かの挑戦を支えるときの確かな土台になります。そしてそれは、いつか自分自身が新しい挑戦へ踏み出すときにも、きっと大きな支えになるはずです。
公認会計士であること自体を目的とせず、この資格を土台として何を社会に返し、自分自身はどこまで挑戦できるのか。その問いを持ち続けたいと考えています。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
今後3〜10年という時間軸では、内部監査で培ってきた経験を起点に、ガバナンス全体を通じて企業価値の向上に関わる仕事へ、さらに役割を広げていきたいと考えています。
内部監査室長として経営や監査役等と関わる中で、一つの機能だけを良くしても、企業全体のガバナンスが機能するわけではないことを実感してきました。取締役会、監査役等、内部監査、経営、現場がそれぞれの役割を果たしながら有機的につながることで、企業が安心して挑戦できる基盤が生まれる。将来的には、監査役等を含め、より経営に近い立場からガバナンス全体に関わる経験も積みたいと思っています。
ただ、その先の自分を一つの肩書きに決めてはいません。むしろ最近は、「挑戦を支えると言いながら、自分自身は挑戦しているだろうか」という問いが、自分にも返ってくるようになりました。
これまでは挑戦を支える側に立つことが多かった私自身が、いつか新しい挑戦の当事者となり、その主人公として一歩を踏み出すこともあるかもしれません。
そんな思いを、今は「挑戦に、確信を。」という言葉で表しています。
誰かの挑戦を支えるための言葉であり、同時に、自分自身へ向けた言葉でもあります。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
自分らしいキャリアをつくりたいなら、まず「少しでも興味を持っている仕事をしている人を一人探し、実際に話を聞くこと」を勧めたいと思います。できれば「いつか」ではなく、今週中に一人決め、30分でも話を聞く予定を入れてみてください。
私自身、現在の仕事や関心領域までを最初から設計していたわけではありません。目の前の仕事に取り組み、人と出会い、興味を持ったことには手を挙げ、ときには自分の考えを外へ発信する。その行動の一つ一つが偶然の出会いや機会を生み、次のキャリアにつながってきました。
キャリアは、すべてを計画どおりにつくることはできません。しかし、偶然が起こりやすい場所へ自分から出ていくことはできます。人に会う、学ぶ、発信する、新しい仕事に手を挙げる。そして何かに出会ったときには、面白そうだと思った自分の感覚を信じて一歩動いてみる。
そうして生まれる「計画された偶然」の積み重ねが、いつか自分でも想像していなかったキャリアをつくってくれるのだと思います。
私自身にとっても、発信はそのための一つの行動です。内部監査やガバナンス、企業価値について考えたことを外へ出すことで、それまで接点のなかった人と出会い、新しい問いをいただき、また次の行動につながる。発信は何かを一方的に伝えるためだけではなく、新しい偶然との接点を増やす行為でもあると感じています。


