会計士の履歴書
古谷 栄秀

有限会社フォークリフト陽晟

代表取締役

古谷 栄秀

ふるや よしひで

家業の業績改善に着手し債務超過解消へ。資金繰りの改善と社内環境改善を課題に再建に取り組む

1982年6月11日生まれ(44歳) 千葉県出身 東京都在住

学習院大学 経済学部経営学科 卒業 2008年合格

古谷 栄秀

01

キャリアサマリー

2008年12月

あらた監査法人(現、「PwCあらた有限責任監査法人」)入所。アドバイザリー業務、法定監査業に従事。 スタッフ、シニアとして4年間勤務。

2012年10月

有限責任フォークリフト陽晟に入社。専務取締役として入社し、経営面、財務面、労務面等会社運営全般に従事。事業再生から業績改善に貢献し、債務超過を脱却に成功。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

2008年公認会計士二次試験合格後、あらた監査法人(現、PwCあらた有限責任監査法人)の東京事務所に入所した。当法人は、監査先、アドバイザリー先として、多数の大手クライアントと業務契約を締結していた。様々な部門があったが、国際財務報告基準(以下、IFRS)の導入支援に興味があったので、会計基準導入支援(アドバイザリー業務)の部門を希望した。当部門では、主に大手金融機関のIFRS導入支援業務、米国会計基準移行に関する内部監査業務に携わった。具体的にIFRS導入支援業務においては、特別目的会社の日本基準とIFRSにおける連結範囲の差異を分析し、IFRSへ移行する業務に携わっていた。米国会計基準移行に関する内部監査業務においては、クライアントに常駐し、米国会計基準により作成された特別目的会社の範囲の適正性、金融派生商品における数値の適正性について内部監査業務に携わっていた。

アドバイザリー部門と並行して、実務要件取得のために、年間を通じて数社の事業会社の監査業務にも携わった。アドバイザリー業務と監査業務から様々な経験ができた。しかし、クライアントの規模が大きくてどうしても全体像が見えにくい(というか見えない)ことで、自分が提供する仕事の価値に疑問を感じ始めた。監査法人入所後少し経ち、起業したいという意欲が湧いてきた。会計業務だけでなく会社業務全般に携わりたいという意識が芽生えてきた。そこで2011年11月頃より転職活動をして、会社の全体像が見える規模の会社として、その当時はベンチャー企業に転職しようと考えるに至った。そこから5月の三次試験合格を機に本格的に転職向けて動き始めた。

転職活動をしている過程で、常に自分はどうしたいのか自問自答を繰り返しながら日々を過ごしていた。そんな中、はじめて父が経営している会社の決算書類を見る機会があった。そこで初めて目にした決算書類は、あまり業績が芳しくないことを物語っていた。父の会社は、昭和59年6月創業で年商2億円未満で社員が6名。規模としては中小であり、会社全体の把握もできる規模であった。そこで、父の会社の立て直しに携わることで、会社全体業務も経験できるし、会計の知識も生かさせるし、クライアントや社員への価値の提供にもつながると考え、父の会社へ入社する決断をした。

古谷 栄秀さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

2012年10月より有限会社フォークリフト陽晟の専務取締役として経営全般、バックオフィス全般に携わっている。まさに中小規模なので、会社業務全般に携わっている感じである。入社当時は、まず資金繰りの改善業務から手を付けた。なんとかしてキャシュフローを生み出さないといけなかったので、キャシュフローの創出に注力した。その過程で金融機関の方との融資対応も行った。今までに数千万円の融資を受けたが、対応していくなかで“公認会計士”という肩書の信用性というのも強く感じる機会が多数あった。

毎月の経理業務については、監査法人経験しかないので苦戦した。今までは出来上がった会計数値を監査していたが、会計ソフトを使用して経理業務を行ったことはなく、実際作成する側になると何も出来なかった。現在はクラウド会計も導入して会計処理の効率化に取り組み、当時よりは数倍の業務効率の実現に成功している。労務業務全般についても社会保険労務士の先生にチェックしていただきながら、給与計算や就業規則等労務書類の作成にも携わっている。給与計算の方法、社会保険、労働保険の仕組み等、一般社会で大事な知識を実体験出来ている。財務、労務面以外にもマーケティング業務や管理会計の知識を生かして戦略を作り、組織作りにも携わっている。ここに関しては、監査法人時代にあるべき内部統制や事業形態を知ることができたので、それらを参考にしながら組織を構築できる強みはある。

このように会計士としての経験は、当社のような中小規模の会社にとって、会計面だけでなく幅広く経験を積めば生かせると思っている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

監査法人を退職して、監査法人外の方とお仕事をする機会が増えた。その中で「会計士の先生って、もうちょっと堅くて話しにくい人かと思った」や「周りの先生達は話しづらい人が多い」といったことを良く聞く。そのような声がある中で自分自身を見つめなおしてみると、自分の強みは“コミュニケーション”だと思う。コミュニケーションといっても様々な解釈があるが、自分の場合は、人とのつながりの太さや広がりを構築するところに強みがあると思う。

人のつながりや人との関係を大切にすることは、今の会社でもとても強く生かせている。会社経営はもちろん自分一人ではできない。会社の内部では、役員間、社員間との関係、外部では、クライアントや会社をサポートしてくださる専門家メンバー等の関係が大事になってくる。これらの方々との良好な関係が、会社や自分自身の業務の遂行を可能にしてくれていると強く思っている。

古谷 栄秀さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

監査法人時代と現在の会社業務に分けて述べる。まず、監査法人時代について述べる。アドバイザリー業務では当然のことながらクライアントにアドバイスをすることになるが、クライアントは大手金融機関のベテランの方々なので、知識としてもクライアントの方があるという状況は多々あった。そのような状況の中、色々調べて知識を付けて、クライアントの知らない知識や内容をアドバイスでき褒めていただいたときにとても心が動いた。監査業務においても、事業会社の業務内容は普通なかなか見ることはできないが、監査業務においては学べる機会がたくさんあったので、心が動いた。

次に、現在の会社業務について述べる。入社当時は会社が黒字倒産目前という状況であり、金融機関も融資を出来かねる状況だった。毎日が壮絶すぎて胃に穴が空きそうになったことも多々あった。また、会社内部も労務問題や人間関係でごちゃごちゃしていた。そんな状況の中で、会社の業績改善、社内の環境改善を目標にひたすらがむしゃらに突き進んできた。その結果として、10年以上毎年損失計上だったのが、私が入社して2年目以降は毎年利益を計上できるようになり、3年目で繰越欠損金がなくなり、現在は債務超過も解消された。会社の業績が改善されていくのを肌で感じることができ、心が動いた。また、社内の労務問題や人間関係についても給与改定等や、社員からヒアリングを繰り返した。関係性も入社当時より明らかに良好になっているのがわかるので、心が動いた。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

アドバイザリー業務においては、大手金融機関がメインクライアントであり、金融分野でもベテラン中のベテランの方ばかり集まっているようなところだった。そのようなクライアントの質問内容や相談内容は、常にレベルが高かった。また、クライアントとのミーティング時においても、議題内容や話す内容もレベルが高かった。しかし、会計士という専門家に対してクライアントはそのレベルを要求しており、理解が乏しくてその場をなんとか取り繕うことも多々あった。専門家だから何でもわかるという前提を常に要求されるのが、苦しい時期があった。

でもこれについては、クライアントに要求されている以上は要求に応えるのがプロだと思っていたので、なんとか対応しようと努力して対応することができるようになった。具体的には、インターネットにて専門用語を検索し、自分なりにデータにまとめたり、金融関係の書籍を片っ端から読んだり、その道の専門家の先輩方に相談したりと、自分が腑に落ちるまで調べ尽くした。

07

人生の目的と公認会計士という資格

会計士2次試験に合格するまで、人生に目的を持って生きて来なかった。毎日が楽しく過ごせればそれで良いかなと思って生きてきた。しかし、会計士になって、会計業務に従事して様々なクライアントと対峙するに連れ、自分の人生を何をしてどう生きていきたいのだろうという発想が芽生えてきた。それまでは、そんなことを考えたことがなかったので、戸惑いを感じたのを覚えている。そこから自分の人生を真剣に考え出し、つい最近ではあるが一つの目的に行き着いた。将来の夢にも繋がってくるのだが、中小企業のオーナー、社長、起業家の方々を、会計面だけでなく経営全般でサポートしていき、そこに自分自身もジョインして一緒に苦楽を共にし、会社の成長を見守るということをやりたいと思えた。

会計数値を把握する力、それを分析する力、そして、その分析を元に戦略を構築していく力。これらの力は会計士だからこそ持っているものだと思う。そのために、自分自身も自ら経営することで経営能力を高め、かつこれらの力も付けつつ、日々努力して成長していけたらと考えている。

古谷 栄秀さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

現在会社の経営に従事することができているので、この経験を生かして、中小企業の経営で困ってる会社をサポートしていけたらと考えている。具体的に業務プロセスを把握し、生産性の向上、生産効率の向上等に関するアドバイスから、バックオフィスの財務面のプロセス構築、改善等一連の流れに携わっていきたいと考えている。また、色々な会社に自分自身が出資し、経営に参画しながら自分が持っているノウハウを提供することにより、中小企業のオーナー、社長、起業家の方々と共に成長していきたいと思っている。エンジェル投資のようなことを将来行いたいと思っている。自分に会社を任せてもらえれば安心できるって思ってもらえるように、常に努力は必要だと考えている。成し遂げたい事や夢を強く意識し、達成するためにはどのようなプロセスを歩めば良いかを常に考えて日々動いている。大きな目的がある状態でその道に向かって進むことが一番の近道だと思う。

古谷 栄秀さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

将来自分の思いを達成するなら、まずは様々な人と出会うと良い。会計士であれば正直なんでもできると思う。難関試験を突破してきた、努力ができる頭の良い方々なので、その経験を生かせば何でもできると思っている。最初は何になりたいとか考えなくても良い。無理してやりたいことを探しても、見つからないときは見つからないだろう。

まずは、監査法人での仕事をしっかり行いつつ、時間を作って監査法人外の人と会う時間を多く作ることをお勧めする。そうすることで色々な考えをもった人と出会うことができ、それが自分の刺激にも繋がる。様々な人との出会いを通じて自分の価値観も変化し、会計士という価値の大きさにも気付く。会計士としての市場の価値は、外の世界に出てみて比較対象ができたとき、そこで初めて気づく部分も多々ある。可能性を大きくするのも小さくするのも自分次第であり、一歩動き始めた人が輝ける時代でもある。これからの世の中は、キャリアは自分で切り開いていく個々の時代になっていくと考えている。その中で個々の力を生かしつつ、周りと連携して進んでいく力が必要になっていくと思う。色々書いてきたが、“動く”ことがまず重要なアクションかと思う。簡単なことからで良い。監査法人内の業務の仕方を変える、業務後様々なセミナーに参加してみる等、自分が動きやすいことから少しずつ動いていくことが大事かなと思う。