会計士の履歴書
荒井 大幸

荒井会計事務所

代表

荒井 大幸

あらい ひろゆき

企業税務と資産税務を一気通貫で請け負う。経営者の黒子に徹し不断の努力を欠かさない二代目公認会計士・税理士

1982年7月3日生まれ(44歳) 東京都出身 東京都在住

学習院大学 経済学部経営学科 卒業

荒井 大幸

01

キャリアサマリー

2005

大手監査法人に入所。 国内監査業務に従事。

2011

中堅税理士法人(1社目)に入所。 企業税務に従事。

2015

中堅税理士法人(2社目)に入所。 事業承継コンサルティングや相続税・贈与税申告に従事。

2017

荒井会計事務所を開業。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

国内監査部門に配属され、主に法定監査に従事する。関与した業種は製造業、小売業、証券業、銀行業、財団法人など国内監査部門でありながら、製造業と小売業を軸にして、金融業や非営利法人にも関与することができた。

製造業や小売業は上場会社であった為、いわば一つの出来上がった会社であり、そこで触れた会社の管理手法や発想は今でも自分の中のモデルケースになっている。

金融業や非営利法人は財務諸表の構造や勘定科目からして一般事業会社と大きく異なる為、勘定科目の意味や使い方から勉強する必要があり、入口で戸惑うこともあったが、勉強して業種に対する理解を深めることの面白さに気付くことができた。その一環として資格試験を勉強のインセンティブとし、証券外務員資格や宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引士)資格を取得した。

一方、監査法人ではソフトスキル研修が数多く提供され、その中でも複数のプレゼンテーション研修受講の機会を得たことが、人前で話すことの苦手意識を払拭し、独立開業してから人前で話す仕事に繋がっており、監査法人にとても感謝している。

前述のように監査法人での国内監査業務は非常に充実していたが、私の父は税理士であり、私はいわば二代目である為、どこかで税務業務に触れたいと考えていた。また、監査現場でクライアントの方がTAXレビューで税理士と話すのをとても楽しみにしている様子を目の当たりにし、税務業務に対するクライアントニーズの大きさに気付いたことがその思いに拍車をかけた。

そこで監査法人系列の大手税理士法人に短期派遣の希望を2回、出したもののインバウンド業務の多い税理士法人は英語力を有する人材を求めており、英語力のまるでない私は2回とも選考を通らず、他の税理士法人への転職を決意する。

その後、2つの税理士法人でお世話になり、企業税務および資産税務に従事し、多様な経験や気付きを得ることができた。

荒井 大幸さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在は父の事務所とは別に私1人の事務所を立ち上げ、税務業務主体の会計事務所を営んでいる。

お客様は中小非上場企業と個人であり、業務は税務顧問を中心に事業承継コンサルティングや相続税・贈与税申告も行っている。中小非上場企業の税務顧問からは、月次決算、本決算、法人税・消費税・地方税の確定申告、社長の個人所得税確定申告、事業承継(場合によっては解散・清算、企業再編)、贈与税申告・相続税申告と法人・個人、加えて複数税目にまたがった横断的な業務が発生する。これらを全て私が請け負うのが私の事務所の特徴である。

月次決算、本決算、法人税・消費税・地方税の確定申告、社長の個人所得税確定申告までは対処するが、事業承継や贈与税申告・相続税申告を手掛けない方は思いのほか多いと感じる。

逆にいわゆる資産税と呼ばれる譲渡所得税申告、贈与税申告・相続税申告や事業承継支援に特化し、継続的な企業税務には関わらないという事務所もある。常々思っているのは、税務は人体と一緒で税目の切り分けはあるものの全てどこかでつながっているということである。

同族会社の法人としての税務メリットばかりを追求して創業家や個人の同族株主への配慮が不足していたり、一方で個人の利得を重視するあまり同族会社にしわ寄せが生じてしまったりしているケースもある。これは企業税務と資産税務を私たちが分断してしまったことにより生じた弊害である。

であるから、私は中小非上場企業から生じる各種税務を一気通貫で請け負う事務所を目指している。でも実はこれは何ら新しいスタイルではなく、昔からある町の会計事務所のスタイルである。

大手税理士法人を除けば、全方位型を志向している事務所と業種や税目に特化している事務所にトレンドは分かれている。

先に述べたように私は業種や税目に特化する事務所を目指してはいない。どちらかというと全方位型に近いのかもしれないが、国際税務や連結納税の概論部分はともかく詳細部分は守備範囲外であることは自覚している。

何でもできるといえば聞こえはよいが、何でもできるは実は何にもできないのである。守備範囲が広いに越したことはないが、自分のできることとできないことを自覚し、できることを少しずつ広げていくこと、できないことはその道に通じた方をご紹介することが独立してからは特に大切だと考えている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

3.今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパスで述べた通り、私の強みは企業税務と資産税務を一気通貫で請け負えることである。企業税務に関しては逆立ちしてもBig4には敵わない。資産税務についても特化型事務所に軍配が上がるだろう。

しかし、税務の総合力でお客様の満足度を高められることが私の強みである。お客様からすれば法人税務に長けた税理士と資産税務を得意とする税理士を併用することで、専門化の利益を享受できるメリットは確かにある。

ただ、お客様は双方の税理士に同じ内容の説明を2度する必要が生じてしまう上、伝達漏れがお客様の税務メリットの取り損ねに繋がったり、税理士からすれば思わぬ事故に繋がったりするケースも出てくるだろう。

だからこそ企業税務と資産税務を一気通貫で請け負うことでお客様の満足度は高まるのである。勿論、法人税務・資産税務それぞれ膨大な知識と経験を必要としおり、それを1人でこなそうとするには私自身の継続的かつ不断の努力が必要なことは言うまでもない。

荒井 大幸さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

私の仕事はプロジェクトベースのスポット業務ではなく、継続的な税務業務であるので、業務の区切りは薄く、1つ1つの仕事を仕上げたことに対する達成感はあっても感動的なやり切った感や解放感はない。

しかしお客様から質問のあった事項や、お客様に有用な提案をする為に調べものを重ね、答えを探し、見つけて出す時間それ自体が私自身に満足度をもたらしているように思う。

元々、調べものが好きなのである。調べる為のツール(書籍やデータベース、研修受講など)には投資を惜しまないし、調べる時間は削らない。これができるのが独立していることの良さでもある。時々、行き過ぎて自己満足に陥ってしまうことがあるのが私の問題点でもあるのだけれど。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士は地頭の良い方やスマートでバランス感覚に優れた方が多いと思う。また、監査法人では若くしてマネジメント経験を積むことができる為、限られたリソースを活かしてチームプレーで定められた期限内にプロジェクトを遂行する能力に優れているのが長所であるとも思う。

しかし、これが度を越して自らの手を動かさず、自らの口と他人の手だけを動かして物事を完結させることができる、しかもそれが当然だと考えている、人の痛みがわからない公認会計士に時々出会うことがあり、悲しい気持ちになる。

自らも同じ轍を踏むことのないよう、複数名で組んで独立する公認会計士も多い中で、敢えて1人で独立するという道を選んだ。全て自らが手を動かし、お客様と直接向き合ってコミュニケーションを取り、お客様から評価されるもされないも全ては自分次第という環境で仕事をしている。また人を雇うストレスからも人に雇われるストレスからも解放され、充実した毎日を過ごしている。

07

人生の目的と公認会計士という資格

私の父は税理士である為、幼い頃から職業会計人の存在は知っており、私自身その道を志し、幸いにも資格を得ることができた。

逆説的ではあるが、この国は私に何かを期待して私に資格を与えたのではないかと思う。その期待を私はこの国の99.7%を占め、経済の生命線である中小企業とその経営者に会計や税務を中心とする有用な情報を提供して、その経営に貢献せよ、人の役に立てということだと解釈している。

元来、私の性格は細かく完璧主義なところがあり、相手と合う合わないもはっきりしているので、トップの器ではない。経験則として私がトップになると下の人が疲れてしまう。私にはナンバー2や黒子的なポジションが性に合う、陰でお客様の為に尽くすことにやりがいと満足を感じられる性分なのである。

公認会計士や税理士は表舞台でスポットライトを浴びる立場ではなく、スポットライトを浴びる方の裏方を演じる役回りだと思っているので、この仕事は私の性格に合っているように思う。

荒井 大幸さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

まずは1人でどこまでできるのかを探求してみたいと思っている。人口の減少、会社総数(お客様)の減少、会計業界を目指す若い人や会計業界で働く人の減少、AIやRPA(ソフトウェアロボットによるプロセス自動化)の台頭など会計業界を取り巻く環境は厳しさを増し、従来の成功モデルに疑義を投げかけている。

経営者は集客に邁進し、獲得したお客様の対応に安価な労働力を確保して大量に投入すればよいとする、これまでの業界の常識はそう遠くない将来に通用しなくなるだろう。

一方で電子申告やクラウド会計の普及など、1人事務所への追い風もある。
しかし、1人の限界はいつか必ず訪れる。いたずらに規模を追求するのではなく、お客様と従業員、そして自らもが幸せになれる会計事務所の姿を考え続けることが私の使命ではないかと思っている。

荒井 大幸さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

会計士受験生へのアドバイス

試験を受けると決めたらとにかく早く受かるように努力すること。試験に時間をかけても良いことは何も無い。試験勉強がうまくいかないと感じている人は書店で販売されている勉強法の本を手に入れ、勉強方法を勉強することを勧める。

合格者が100人いたら100通りのアプローチがあるのは事実だが、結果として短い期間で合格している人とそうでない人に別れる。しかし合格者には勉強法に関してある一定の共通項が存在すると感じる。自分にとって正しい勉強法を見つけたら、あとは愚直に繰り返すだけである。

キャリアを模索する会計士へのアドバイス

監査法人で働いている会計士は与えられた仕事だけをこなすのではなく、自らの仕事を組み立てること。多種多様な業務に触れるのは良いことであっても時間は有限だから、より多くの経験値を得られるような仕事を自ら取捨選択することが重要だと思う。

また、パートナーを目指すのであれば全身全霊をかけて努力する覚悟が要求される。監査法人でパートナーになる為の競争は苛烈だと思う。もし、パートナーを目指す気がないのであれば監査法人に長い期間、在籍することは避けた方がよいのではないか。

監査法人での経験はその後のキャリアの大切なベースとなるが、一般的な監査法人勤務の経験しか持たない公認会計士に対する市場評価の低さに早めに気付けるかどうかで、その後の人生がガラリと変わる。一番大切なのは自らのキャリアを見つめ、考え続けることだと思う。

●代目へのアドバイス

家業を継ぐと決めたなら家業で取り扱っている業務に関する経験を外部の事務所で一定程度、積んでから家に戻った方がよいと思う。

家に戻り経営の承継をしながら自らの手も動かさねばならない中で、並行して技術や知識の習得を1から行っていくのは難しい。家に戻ってから技術面や知識面の不足を露呈してしまうと、先代経営者に長く仕えた古参の職員から相手にされなくなる恐れがある。

また、外部の事務所に勤務し、その事務所の思想や強み・弱みに触れることで、自らがこれから作っていく事務所をイメージすることができるメリットもある。

最後に

独立する前はやはり色々と不安があった。今でもその不安が完全に払拭されたわけではない。ただ、1つ言えることは独立してから、とても楽しいということである。士業がなぜ自由業と呼ばれるのかが少しだけわかった気がする。

勿論、自由にはそれと引き換えに大きな責任がついて回る。でもそれすらも楽しみながら1人の経営者として、試行錯誤と失敗から気付きを得て、前に前に進んでいきたいと思っている。