会計士の履歴書
T.H.

PwC税理士法人

税務レポーティング・ストラテジー(TRS) パートナー

T.H.

異文化コミュニケーションでクライアントに寄り添う会計士

1981年7月30日生まれ(45歳) 香川県出身 東京都在住

一橋大学経済学部

T.H.

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キャリアサマリー

2003年9月、大手監査法人に非常勤職員として入所し、2004年3月に大学を卒業後、正職員として法定監査に従事した。その後、2006年9月、PwC税理士法人に転職し、法人事業部門にて日系・外資系の税務コンプライアンス業務および税務コンサルティング業務に従事。税務デューデリジェンスやストラクチャリングなど、M&A案件に関わる税務アドバイスにも関与した。さらに、2012年8月から2014年12月までPwC米国への出向を経験する。ローカルのスタッフとともに、米国大企業を中心としたクライアント向けに税務コンプライアンスおよび税務コンサルティングサービスを提供し、大手食品企業やメーカーのオンサイトでの税務業務支援にも関与した。そして、2015年1月に帰任し、現在に至る。

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監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

監査法人では、電力会社、製造業、海運業、地方銀行、財団法人、国立大学法人など、幅広い業種・規模の会計監査を担当し、Annual reportの作成支援などにも従事した。監査業務に従事する中で、若いうちから経営者とのディスカッションに参加し、会計方針や開示情報に関する相談にのる機会も多く得ることができた。既に上場している大企業だけでなく、これから上場を目指して会計制度や内部統制の体制構築を進めているクライアントに対し、経営陣と伴走する形で支援を行ったことは、自身の後のキャリアに続く非常に良い経験であった。同時に、経営陣の大きな関心事の一つとして「キャッシュをいかに増やすか」という課題があることに気づき、キャッシュに直結する税務関連のコンサルティングに関心を持つようになった。当時、将来的には地元香川で独立・開業したいという思いがあり、この気づきがきっかけとなり、税務の専門ファームで経験を積みたいと考えるようになった。複数の候補があった中で、特にレスポンスが早く、会計士としてのバックグラウンドがある人材の採用に力を入れ、「ウェルカムな雰囲気」があるPwC税理士法人に惹かれ、三次試験(現在の修了考査)のタイミングで転職を決意した。

T.H.さん

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在は、日系および外資系の多岐にわたるクライアントに対して、税務コンプライアンスおよびコンサルティングサービスを提供している。具体的には、申告書の作成、税務関連手続きの支援、M&Aや資本再編・組織再編に関する税務コンサルティング、新しい取引を始める際の税務面からのアドバイスなど、多岐にわたるサービスを提供する。これらの業務は、国内のクライアントのみならず、海外のクライアントや海外のネットワークファームのメンバーなど、幅広いステークホルダーと日々コミュニケーションを取る必要があり、税務の専門知識に加え、高いコミュニケーションスキルが求められる。

PwC税理士法人に入所して早18年が経過する。キャリアを振り返ると、仕事に追われながらも地元に思いをはせ、キャリアプランに悩んだこともあったが、大きな転機となったのは2012年8月のPwC米国への出向であったと感じる。出向の話は、入所11~12年目のマネージャーの頃に、当時大変お世話になっていたパートナーからいただいた。最初の4カ月間は、世界各国のPwCから同プログラムに参加した仲間と共にロサンゼルスに滞在し、PwC米国ロサンゼルス事務所に在籍しつつ、University of Southern CaliforniaのMaster of Business Taxationプログラムに参加して米国税務を学習できるという大変魅力的なプログラムであった。その魅力に惹かれ、先々の苦労を考えることもなく、目先の利益に飛びつく形で出向を決意した。参加メンバーがPwC米国内の各事務所に赴任する中、私はワシントンDC郊外にあるバージニア州のマクリーン事務所に赴任した。現地のチームに属し、現地のクライアントに対して米国税務の業務を提供する仕事がメインであった。日系のクライアントはおらず、日本の税務や日本語の知識を活かせる場面は全くなかったが、転職したような感覚が非常に新鮮であった。また、世界中20数カ国からプログラムに参加した仲間と横のつながりができたことも大きな財産である。自分の仕事をする上で、彼らのような海外のPwCのメンバーのサポートが必要なことも多く、逆にクライアントが海外で何かをしたい時には、海外の税務に関する専門的なことは彼らに聞かないと分からないため、チャネルを保てていることは非常に強みとなっている。さらに、日本の法人内に出向してきているメンバーや、ローカルハイヤーの外国籍のメンバーとの連携は、海外経験の前と後では大きく異なることを実感している。出向先では、英語のネイティブスピーカーでない方も多く働いており、彼らは自信を持って笑顔で堂々とコミュニケーションを取るが、よくよく聞いてみると文法も発音も必ずしも正確ではないこともあった。出向前、海外で仕事をするためには英語が完璧でなければならないと思い込んでいたが、彼らに励まされて、日本人の日本語も文法的に正しくなくても通じることがあると気づき、気楽に考えられるようになった。
 スタッフの頃は、申告書の作成や会計監査目的での税金計算レビューから始まり、次第にM&Aに関するデューデリジェンスレポートの作成、ストラクチャリング(M&A手法等)アドバイザリー、複雑な海外税務アドバイザリーなどへと業務の幅が大きく広がり、専門性も高まってきたことを実感している。地元での独立・開業を見据え「3年で辞めます」と宣言していたスタッフ時代の自分が懐かしい。

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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

海外での経験は、言葉の問題だけでなく、カルチャーの理解の観点からも自身の視野を広げ、マインドセットを変えるためのかけがえのない経験であった。日本国内のように多くの人が同じ文化的背景や考え方を共有している環境で仕事をしていると、協調性や「阿吽の呼吸」によって共通理解を得やすいメリットがある反面、異なる文化圏の人がどのような思考をするのか、どのようなコミュニケーションを取るとうまく伝わりやすいかには気づきにくい。
 海外現地チームに属し、現地のクライアント向けにサービスを提供した経験は、そのような気づきを肌で感じる機会となり、異なる言語、異なる考え方、異なる歴史や文化を持つ人々と理解し合うためのコミュニケーションや言語化の手段を学ぶ貴重な機会であった。また、インクルージョン&ダイバーシティへの理解を深める機会にもなった。たとえば、後輩に仕事の改善案についてフィードバックをする際、日本では「分かりました」と素直に聞き入られることが多いと感じる。しかし、米国滞在中には「なぜですか、具体的にどういうことですか」と逆に問い詰められる経験を少なからずした。
 帰国後は、外資系インバウンドのクライアントを比較的多く担当しているが、このような経験があったからこそ、海外のクライアントにメールを送る際、英語話者にはこういう伝え方をした方がスムーズに進むといった具体的なアプローチができるようになった。また、クライアントとコンフリクトが生じ得る局面でも、「こういう表現で説明をするとこの文化圏の方はセンシティブに反応してしまうから、このように説明した方が納得していただきやすい」といったように、語学だけでは得られないコミュニケーションスキルを業務に活かせていると感じている。さらに、たとえ共通言語を持つ日本人同士であっても、相手の立場に立って物事を考える視点や、それぞれの違いを尊重する視点、自分の中の当たり前を疑う視点を持つことができていると実感している。

T.H.さん

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

監査法人での法定監査業務は、その特性上、投資家や規制官庁等のステークホルダーも考慮し、第三者的な立場からクライアントである被監査会社に対峙する必要がある。一方、税務アドバイザーは、クライアントが達成しようとする目標や抱えている税務面の課題を、クライアントと同じ目線で寄り添って支援する。この立場の違いも、監査業務から税務領域へのキャリア変更を検討する際の大きなモチベーションであった。このような背景がある中で、長く関与させていただいているクライアントのマネジメントの方から、「Hさんは単なる税務アドバイザーではなく、ビジネスを拡大するにあたっての信頼できるパートナーだ」とフィードバックをいただいたときは、コンサルタント冥利に尽きる、非常にうれしい瞬間であった。
 また、PwCは法務、会計、アドバイザリー、コンサルティングなど、多岐にわたる専門家集団である。これらのさまざまなサービスラインのメンバーと協業することで、税務にとどまらない幅広いコンサルティングサービスをクライアントに提供することができる。自分一人ではできないことでも、チームにつないでクライアントのニーズをワンストップで満たすことができるのは、大手のグループネットワークがあるからである。たとえば、海外にいるクライアントが日本で子会社を作りたいという相談があった際、税務申告は私たちがサポートするが、会社設立の法務手続はPwC弁護士法人にリファーしてサポートを依頼することがある。会社の立ち上げ当初は日本に従業員もほとんどおらず、日々の記帳もままならないというときには、アウトソーシングサービスを提供しているPwCアウトソーシングサービス合同会社に記帳代行や給与計算・支払事務のサポートを提案し、つなぐことも多くある。そういった中継役に自分自身がなれた時は、非常に大きなやりがいと喜びを感じる。

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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士に限らず、コンサルタントという仕事は、クライアントのビジネスをあくまでも外からサポートする立場にある。つまり、クライアント内部の深いところにはアクセスが難しいという側面を持っている。経験を重ね、さまざまなクライアントに寄り添いアドバイスをしていく中で、私を信頼して会社の内情を共有していただく機会が増えてきたが、どこまで行ってもクライアントと全く同じ状況に踏み込むことは難しく、どのような意思決定の経路でどのような議論がなされているのかといった、外からは見えない部分について、いかに価値のあるサービスを提供できるかについて悩んだことがあった。クライアントと同じ目線でアドバイスをするという立場に憧れて監査人から税務コンサルタントに転職した私にとって、この壁に直面したのは想定外の出来事であった。
 今では、さまざまな会社のビジネスにアクセスできるという外部コンサルタントの強みを再定義し、その領域における他社の状況や成功例・失敗例、業界全体の動向などから得られる知見を踏まえて、ニュートラルな立場でアドバイスすることでクライアントに最大限の価値を提供しようという気持ちに至れるようになった。「第三者たるジレンマ」にとらわれず、コンサルタントとしての知見を高めていくという考えを大切にしている。

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人生の目的と公認会計士という資格

学生時代、特にこれと言ってやりたいことがなかった私は、「一般企業への就職活動をしている先輩方はインターンや自己分析などが大変そう」「独占業務のある資格を取れば、その業界で就職できそう」という消極的な考えの下、資格取得に興味を持った。自分が関心を持てる領域の専門家として、人の役に立ち、社会から信頼される仕事がしたいと考えていた私にぴったりマッチしたのが、中学時代から存在を知っていた公認会計士であったため、迷わず目指すことにした。
 公認会計士となった現在は、会計士の資格をもつことだけでなく、そのために必要な知識を学習することや、その資格が求められる領域で仕事をすることによって、さらなるキャリアの可能性が広がっていることに気づいた。今でも「人生の目的」と言えるような大層な考えは明確にはないが、この資格を生かしつつ、自分の活躍の場を見出せると良いと思っている。

T.H.さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

定年退職まであと17年。まだまだ、ようやく折り返し地点である。引き続き自身の経験値を高め、クライアントと良好な関係を構築しつつ、幅広い専門家が集結した組織であるPwCにおいて、さまざまなエリアの専門家と協働しながら、クライアントの課題解決を支援していきたい。そして、自分がやりがいをもって働くだけでなく、仲間たちが一緒に楽しく働ける環境をつくっていきたいと思っている。この仕事は自分だけでできるものではなく、マネージャーやスタッフ、チームの仲間たちの多大な貢献があるからこそ、クライアントに良いサービスをお届けすることができているからだ。「良い職場」の環境は、今までもこれからも、時代に応じて変化し続けるため、変化する時代に順応できるマインドセットを持つことが大事だと考えている。

T.H.さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

資格の取得はゴールではなく、キャリアのスタートである。資格を取得した後、何ができるのか、何をしたいのかということがモチベーションとして大切だと思う。公認会計士の受験勉強の範囲は会計だけにとどまらず、税法や経営学など多岐にわたり、取得までの道のりは険しいが、その分だけその先に広がる可能性も大きい。独占業務である会計監査を中心として、起業したり、CEOになったり、今の自分では想像もできないような選択肢が見えてくることもある。そして、そういった選択肢に興味を持ったら、「やってみよう」と飛び込める基盤が身に付く資格でもある。
 税務業務については、毎年同じ会社の申告書を作成するルーティン業務のイメージを持つ方もいるかもしれないが、同じ会社の申告業務に継続的に携わるにしても、スタッフの頃は申告書の一次ドラフトを作成していたのが、マネージャーになると後輩が作ったドラフトをレビューしてアドバイスする立場になり、そのプロジェクト全体やスタッフのスケジュールを管理するようになる。そしてパートナーになると、クライアントとのリレーションを維持するためにコミュニケーションを取ることが中心となる。このように、1つの申告業務の中にもステップがあり、ロールが変わるたびにどんどんステップアップしていけるため、業務に飽きることはない。
 また、申告業務の他にコンサルティング業務もあり、「税務相談」と一口に言ってもさまざまな相談がある。今まで考えていなかったことや新しいルールに関する相談を受けるときは、「こんなことを新しくしなければならないのか、ではそのために会社として、どんな体制が必要か、PwCとしてこういうサービスの機会があるんじゃないか…」と、知的好奇心が満たされやすい環境にあり、さまざまなことにチャレンジできると実感する。「キャッシュに影響するようなコンサルティングがしたい」とか、「よりクライアントの立場に寄り添ってアドバイスをしたい」という気持ちが強い人は税務に向いていると感じる。
 日々、大変なことや失敗があっても、ポジティブで楽しい未来を想像しながら、一つひとつ乗り越えていくマインドを持ち、あまり思い悩まずに、「何とかなる」という気持ちで目標を目指してみるのも良いかもしれない。