“会計士×弁護士”。すべての人が個性を発揮して社会貢献できる社会を目指して
となりの法律事務所 / 伊勢田 篤史
“会計士×弁護士”。すべての人が個性を発揮して社会貢献できる社会を目指して
となりの法律事務所 / 伊勢田 篤史
今回の特集は、会計士と弁護士のダブルライセンスをお持ちの伊勢田 篤史(いせだ あつし)さんをご紹介します。伊勢田さんといえば、“終活弁護士”として数々のメディアで取り上げられているので、すでにご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか?公認会計士試験に学生合格してあずさ監査法人で4年間実務経験を積んだのち、ロースクールに進学して見事に司法試験に合格、2014年より弁護士活動を始められました。今回は、今後の相続問題で身近に起こりうるデジタル終活や、会社設立のお話し、会計士と弁護士のダブルライセンスについて、キャリア構築に関する価値観など、バラエティーに富んだお話をお伺いしました。
となりの法律事務所
L&Aの、LはLaw(法律)をAはAccouting(会計)を意味する。弁護士と公認会計士の両資格を有した者のみで構成された弁護士法人。M&Aや企業再生、企業間訴訟、上場企業及びベンチャー企業の支援など、法務財務双方の観点から包括的な知的アドバイスを提供。東京都港区虎ノ門に事務所を構える。
キャリアサマリー
神戸生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。中央大学法科大学院修了。
大学3年次に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格し、翌年あずさ監査法人入所。
監査法人にて4年の実務経験後、高校生の時の夢をかなえるため中央大学法科大学院(未修コース)への進学。大学院修了後、司法試験に合格し、2014年弁護士登録。
弁護士として活動する傍ら、日本デジタル終活協会や株式会社Beyond Consultingを設立し、弁護士・公認会計士の枠にとらわれない活動を展開している。
著書に、「契約審査のベストプラクティス ビジネス・リスクに備える契約類型別の勘所」共著(レクシスネクシス・ジャパン)、「応用自在!覚書・合意書作成のテクニック」共著(日本法令)、「ストーリーでわかる営業損害算定の実務 新人弁護士、会計数値に挑む」共著(日本加除出版株式会社)、「公正証書遺言セミナー&作成キット」(株式会社レガシィ)など多数。
紛争が起きない世の中を目指す
伊勢田さんは弁護士と公認会計士のダブルライセンスという素晴らしい経歴をお持ちですが、現在はどちらの業務がメインになりますか?
現在は弁護士業務に多くの時間を割いています。公認会計士として会計監査等を担当しているわけではなく、会計士としての業務は少ないです。
メインの弁護士業務についてお聞きしたいのですが、伊勢田さんの紛争へのかかわり方にはある特徴があるそうですが、どのような特徴なのでしょうか?
弁護士というと“紛争解決型”、すなわち、紛争が起きてしまってから紛争を解決するのが仕事と思われがちですし、実際にも紛争解決の業務が大部分を占めているといえます。
ですが、私自身は“紛争回避型”、すなわち紛争が起きてからではなく、紛争を回避するよう事前に対応する活動を中心に行っています。誰も揉めたくて揉めるわけではありません。紛争を事前に防ぐこと、ひいては紛争を0にすることこそ、弁護士としてあるべき活動ではないかと考えています。
相続で苦しめられる人を0に
弁護士活動の専門分野は何ですか?
弁護士・公認会計士として、もちろん企業法務も多く担当していますが、今は相続対策・事業承継対策にも力を入れてを中心に活動しています。
さきほど紛争を0にすると申し上げましたが、“相続で苦しめられる人を0に”というミッションを掲げて、終活弁護士として相続対策や事業承継対策を中心に業務を行っています。
“終活弁護士”という言葉をご存じない方もいると思うのですが、この肩書はご自身で思いついたのですか?
そうですね、“相続弁護士”という名称も考えたのですが、“相続弁護士”だと相続で揉めてから紛争解決するというイメージが強いような気がしていました。
そこで、紛争解決ではなく、紛争回避を押し出すような名称を考えていたときに、“終活弁護士”というアイディアが思い浮かびました。当時、“相続弁護士”という名称は掲げている弁護士は何人もいたのですが、“終活弁護士”という名称を掲げている弁護士は皆無だったので、SEO対策の面からも、“終活弁護士”という名称を使用することに決めました。
公認会計士でもあるので企業法務が中心だと思ったのですが、相続対策に取り組もうと思った理由はなんですか?
ロースクールの頃から、家族間の想いが複雑に絡み合う“相続”に興味がありました。それは、今まで監査法人という組織対組織のドライな世界にいたからこそ、人対人のウェットな世界に“あこがれ”に似た感情を持っていたからかもしれません。
実際、弁護士となり、多くの相続案件を担当し、相手方の一挙手一投足に苛立ち、精神的に辛い思いをされる方を多く見てきました。ただ他の事件とは異なり、相続は、人は必ず死ぬという性質上、予見できる問題でもあります。
将来必ず起こる相続問題に対し、事前に適切な対応を行うことで、相続で苦しめられる人を0にしたい。数多くの相続紛争に触れる中で、このような想いを持つに至りました。
デジタル終活の必要性と普及活動にかける情熱
2016年に日本デジタル終活協会の代表理事に就任されて、“デジタル終活”の普及活動をおこなってきたとお伺いしています。
相続対策の業務を行うなかで、“デジタル終活”という言葉に出会い、本気でこの活動を多くの人に知ってもらいたいと考えました。
“デジタル終活”について詳しく教えていただけますか?
“デジタル終活”とは、デジタル遺品(スマホ上の写真データやネット・サービスのアカウント等)に対する死後の取扱いについて考える活動です。
デジタル遺品の多くは、通常の遺品と異なり直接目に触れるものではないため、死後に整理するときに遺族にかかる負担は想像以上に大きくなります。事前に対策を行って、遺族の負担を軽くしようというものです。
今後、ますますデジタル機器が普及していく中で、“デジタル終活”は大きな問題となる要素をはらんでいます。
デジタル終活の認知度をあげるためにご苦労はありましたか?
私は思いついたら即行動という性分で、すぐに日本デジタル終活協会という団体を設立した上で、当時日本で初めてデジタル終活に特化したエンディングノートの企画・制作をしました。また、セミナーコンテンツを企画し、毎月のようにセミナーを開催しました。
活動の甲斐があり、日本デジタル終活協会の活動は、あさイチやWBS(ワールドビジネスサテライト)等のテレビやラジオ、雑誌等のメディアにも多く取り上げてもらいました。
以前は、デジタル終活の名刺を渡しても、「デジタル終活って何ですか?」という質問ばかりで全く認知されていませんでしたが、今では2割くらいの方から「あ、知っています」という回答を受けるようになり、認知度が上がってきたと実感しています。
このたび事業承継対策サービスを提供するコンサルティング会社を設立したそうですが、どのような会社なのでしょうか?
経営者の方々に“コンサルティングを超えたサービス”を提供したいという想いで、2018年2月1日に株式会社Beyond Consultingを設立をしました。
“コンサルティングを超えたサービス”として、既存のコンサルティング業務にはない、全く新しい視点からのサービスを念頭においています。
具体的にどのようなサービスを提供する予定ですか?
まだ事業の立ち上げ段階ではありますが、現在は、中小企業の事業承継対策支援のプラットフォーム作りを検討しています。
まだ詳細は明かせませんが、既にたくさんの方々からの支援を頂いており、来年の夏ごろには形にできるよう急ピッチで作業をしています。
事業承継問題を抱える中小企業は今後さらに増えていくと思うのですが、株式会社Beyond Consultingの新しい仕組みが普及することで、将来的にどのように変わっていくとお考えですか?
将来的には、中小企業の事業承継が、社会的な問題として議論されなくなるような社会の実現を目指しています。
すべての企業が、適切な事業承継対策を容易に行うことができるような仕組みを作り、士業やコンサルティングファーム等がこれを活用し、互いにWin-Winな関係となることができるよう設計したいと考えています。