
𠮷永会計事務所
代表
𠮷永 明宏
よしなが あきひろ
IPOコンサルティングと税務業務で独立開業の夢を実現。自分に合った働き方ができるのも開業の魅力の一つ
1986年7月18日生まれ(40歳) 岐阜県出身 愛知県在住
名古屋大学 経済学部経営学科 卒業 2007年合格

01
キャリアサマリー
会計士二次試験に合格
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツ静岡事務所に入所。
名古屋事務所に異動。
監査法人を退職し、公認会計士として独立
税理士登録
監査法人時代は、地銀、信用金庫などの金融機関監査をメインとしつつ、製造業、小売業、ソフトウェア開発業など幅広い業種の会社に関与。IPO監査業務も担当。 独立後は、IPO準備会社のコンサルティング業務、税理士業務、監査法人の外部協力者として監査業務も実施。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
私の実家は自営業であり、父は中小企業診断士として、中小企業の経営コンサルティング業務を個人として営んでいた。そんな環境で育ったためか、「将来は独立するんだ」という漠然とした意識が自然と芽生えていた。“独立する”ということは、自分の力で仕事を取り、自分の力で生計を立てることであるが、そのためには父のように何か資格を取るべきだと考え、「数字が得意だから」「難しそうだから」という理由で公認会計士を志したのがきっかけだった。
大学2年生になる春から勉強を始め、3年生の秋に公認会計士論文式試験に合格し、卒業とともに監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)の静岡事務所に入所した。地元は岐阜県、大学は愛知県であり、名古屋での就職も考えたが、当時リクルートで参加したインターンシップで接した静岡事務所メンバーに魅力を感じたこと、監査以外にもいろんな業務を実施できる環境に魅力を感じたことから、静岡事務所に決めた。
静岡事務所は監査・税務を合わせて100名程度の規模であり、事務所メンバー全員の顔と名前がわかることで、一体感のある事務所だった(当時は初めての職場だったので、それが当たり前に感じていたが、後に300名規模の名古屋事務所に異動して実感した)。静岡事務所では、監査業務の基本を教わったのは勿論のこと、監査業務以外にも、非上場企業に対するコンサルティング業務(会計に関する指導助言)、IPO準備会社に対するコンサルティング業務に関与し、顧客の成長に直接役に立てる仕事を経験させてもらった。また、静岡ベンチャーサポートという活動に参加し、地元のベンチャー企業の経営者と接する機会も与えてもらった。優秀な先輩・同期・後輩に恵まれ、沢山のことを学ばせてもらった静岡事務所での4年間を通して、自分なりの“社会人としての基礎”と“公認会計士としての基礎”を固めることができた。
静岡事務所に入所してから4年が過ぎた頃、結婚を機に地元に戻ることに決め、トーマツの名古屋事務所に異動させてもらった。静岡事務所で銀行監査に従事していたことがきっかけで、名古屋事務所の金融業務を担当している部門に配属され、名古屋事務所では金融業種の監査が6割、その他の監査が4割というような業務内容だった。マネージャーにも昇格し、主査(主任)も数社担当したが、そのうちの1社がIPO監査業務の主査だった。IPO監査業務は、管理体制が未熟な企業に対して、専門家として会計や内部統制に関するアドバイスをしながらクライアントの成長に携わっていく側面がある。上場という同じゴールを目指してクライアントのために仕事をし、クライアントから直接感謝される。“お客様に直接感謝されるということ”が自分の仕事の原動力になることが再認識された。
気付くと、“独立”を志して公認会計士の資格を取ったのに、監査法人で勤務して8年が過ぎていた。8回目の繁忙期が収束してきた2017年5月に、独立を決心し、退職を決めた。一番のきっかけとなったのは、その前年にマネージャーに昇格したことで会計監査について一通りのスキルは身についたと感じたこと。年齢も30歳という節目を迎え、自分が本当は何をしたいのか、を自答した結果、驚くほどあっさりと“独立”という考えに至った。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
今の仕事内容は、コンサルティング業務4割、監査業務3割、税務顧問業務2割、その他1割という割合。
コンサルティング業務としては上場準備会社に対する内部統制構築の支援や会計・経理業務の助言を実施している。監査業務は、監査法人の外部委託者として監査業務を実施している。税務顧問業務は2018年2月からスタートしたばかりであるが、クラウド会計を活用して日々の経理業務を効率化し、その分の時間を顧問先のコンサルティングに充てるようなスタイルをとっている。
当然のことだが、独立してからは、自分で全て決めることができるという点が大きく変わった。仕事のスケジュールも自分が決められるし、仕事を受けるかどうかも自分で決められるし、提供するサービスや成果物も自分次第で決められるようになった。自由になった反面、組織に守られる環境ではなくなったため、良い意味の緊張感を保って仕事ができていると感じる。
私は、自由に、自分のペースで仕事をしていきたいと考えているため、人を雇わずに全てひとりで仕事をやっていくつもりだ。現在のようにITが普及した時代では、ITやクラウドサービスを活用して時間や場所を選ばない働き方は可能であるし、様々なサービスがアウトソーシング可能であるため、ひとり事務所であってもやり方次第で活躍できると考えている。
今後も、“自分の能力・知識・経験を活かして、直接クライアントの役に立ち、感謝してもらえる仕事”をしていきたいと考えている。現時点では公認会計士としての経験を活かした財務・内部統制に関するコンサルティング業務と、税理士業務がそれに該当するが、これから経験や勉強することを通して、できることがどんどん増え、やりたいこともどんどん変化してくると思うので、今後の仕事内容については柔軟に考えている。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私は、自分自身の強みを2つ認識している。1つは論理的に考える力、もう1つは前向きな性格。
●論理的に考える力
論理的に考える力とは、物事の原因と結果を順序立てて考える力と認識している。具体的には、物事を正確に理解する力、と物事を論理的に説明する力である。もともと数学が大好きで、論理的な思考が自然に身についたのかもしれないが、日々の生活や仕事の中でも「なぜ?」を考えるようにしている。会計監査の仕事は、リスクアプローチが基本となっているが、リスクを識別するプロセス、識別したリスクに対応するプロセスそれぞれについて論理的な思考は大変役立った。
会計士や税理士の仕事には、クライアントにあるべき会計処理や税務処理を説明し、納得してもらう場面がある。事象を正しく捉え、自分の言葉で理解し、クライアントに説明し、納得してもらう、といった点に自身の強みが役立っていると思う。
●前向きな性格
個人的な印象だが、この業界に身を置いて感じたのが、会計士には「保守的」な思考の方が多いということだ。会計監査という職業柄なのか、“リスク”に触れているからなのか、難関といわれる資格試験を通り抜けているためなのか、理由はわからないが、そういう会計士が多いように感じる。
私の周りでも監査法人をやめる方はたくさんいたが、有名な上場企業の経理部門や内部監査部門に転職する方が多く、独立開業される方や、ベンチャー企業に転職されるような方は少数派だった。また、監査法人で勤務している同僚や先輩・後輩と話していても、独立には興味があるけれど、「独立しても上手くいかないかもしれない」、「もう少し経験を積んでからにしたい」、「独立したいがまだ早い」といったようなことを聞く。上手くいかないイメージが先行しているようだ。
私は前向きな性格なので、ポジティブに考える面がある。
独立を決断した時も、「仕事が無かったらどうしよう」、「自分にできるかな」と思った事はない。「とりあえずやってみて、だめならそれから考えよう」、「きっと何とかなるだろう」くらいの考えでいた。
実際に独立してみると、今までとは種類の違うプレッシャーを感じるし、様々な新しい人・新しい事との出会いがあるが、それ自体がとても刺激的で、充実した毎日を過ごせている。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
現時点の私のキャリアのほとんどは監査法人時代が占めるので、その点から書く。
監査法人には8年半ほどいたのだが、最初のうちは監査業務をどんどん身に付けていく、毎年、より難しい科目をこなしていくといった状況で、日々の仕事をこなしていくのが精一杯だった。監査チームの主査や上位者から指示されたタスクを、できるだけ高い品質で、効率的に遂行することが求められているため、全体的な監査戦略を自分で考えるという立場にはなかった。
入所後しばらくはそのような状況が続いていたが、4年目くらいの時に法定監査の主査を担当させてもらうことになった。主査は監査チームの中心となって監査のマネジメントをする立場になるため、自分で監査戦略を立案することができる。「この会社にはどのような財務報告上のリスクがあるだろうか」、「そのリスクに対してどのような監査手続を実施して対応しようか」といったことを自分で決めていくことが、私にとっての監査の面白さに繋がった。
監査法人で仕事をしている中で心が大きく動いた瞬間は、初めて主査として担当した会社で、年度監査が無事終了し、監査報告書を提出したときだった。その1年間の監査業務の中で様々な事が起きて、苦労したこともあったので、それらが報われたことも嬉しかった。
もう一つは、静岡事務所から名古屋事務所に異動をした際に、入所以来ずっと関与していたクライアントで接点のあった皆様が送別会を企画・実施してくださった。送別会の中で、お世話になったクライアントの経理部門の皆様から、一言ずつ温かいメッセージが寄せ書きされたサインボードをプレゼントしていただいた。そのクライアントの皆様は、私の仕事をちゃんと見ていて、評価していただいたということがわかり、非常に胸が熱くなった。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
正直なところ、仕事に関連して深く悩んだことはない。
ただ、公認会計士という仕事は、活躍できるフィールドが広いため、自分が将来どんな公認会計士になっていたいのか、ということについては悩んだことがある。将来は独立することを前提に考えていたので、監査法人勤務時代は、独立後に「市場から見て自分にはどんな価値があるのか(どんな価値を提供できるのか)」ということを考えていた。しかし、監査法人にいる間は、監査法人のブランドに守られている自分として評価されるため、「結局はやってみないとわからない」という結論に至った。なので、とりあえず自分の現在の価値を試してみるために独立した。
今は、“公認会計士として”という枠を外して、「自分が将来どんなことをしていたいか」ということを考えている。独立して、いろんな新しい情報に触れるようになって(アンテナを張るようになって)、やりたいことがどんどん増えて、変化してきている。そういった意味で今後も悩んでいくのかもしれない。
07
人生の目的と公認会計士という資格
人生の目的というとおおげさだが、私は人生を自分の思うように生きたいと思っている。
組織に所属していると、自分がやりたくない仕事であっても引き受けなければならないし、仕事のやり方も制限がかかるし、成果物の水準も自分で決めることはできない。
独立すると、自分で仕事を選ぶことができるので、やりたくない仕事はやらなくてもよい。自分にあった働き方を取ることができるし、成果物も自分が納得するレベルで提出することができる。反面、すべての責任は自分で負わなければならないのだが、それも含めて独立して働くスタイルは自分に合っていると感じる。
これが実現できているのも、公認会計士という資格のおかげだと思っている。
公認会計士が活躍できるフィールドは広いといわれているが、会計監査を離れると独占業務がないため、独立会計士にとっては、資格に仕事が守られているというわけではない。しかし、「会計」は企業の事業活動にと必ず関わる領域であるため、ビジネスフィールドは多岐にわたり、公認会計士の社会的ニーズは高いと感じている。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
独立してから感じたのが、自分ひとりでは、大きな仕事を受けることができないということと、会計以外の領域では顧客の役に立てない面が多々あるということである。例えば中小企業の関心事として事業承継の問題があるが、自分一人だと会計・税務面のサポートしかできないと思う。弁護士や司法書士、社労士、中小企業診断士などの専門家と連携して、法務面や労務面、組織面などのサポートを総合的にできるような仕事をやりたいと考えている。
自分にしかできない価値を提供してお客様から感謝されることを目指している。そのためにも、新しい仕事には積極的にチャレンジし、新しい情報や知識を積極的に取り入れ、自分の価値を磨き続けなければならない。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
独立するのは簡単だ。今働いている職場に「辞めます」というだけだ。
ただ、その一歩を踏み出すのにはエネルギーがいると思う。現在の安定を捨てる決心をすること、将来の不安に打ち克つこと、場合によっては周囲の反対を説得することも必要になってくる。私は自分を前向きな性格だと思っているが、それでも結婚して子供がいる中で、8年半属した組織を辞めるのには、それなりのエネルギーを使った。
そんな私から1つだけアドバイスをさせてもらうとしたら、“既に独立した会計士と話すこと”をお勧めする。
「独立して何ができるのだろうか」、「独立したらどんな変化があるのだろうか」という不安があるのであれば、実際に独立した会計士にその質問をぶつけてみるといい。きっと多くの会計士が、自分が思っている以上に会計士の活躍できる場が存在することを教えてくれると思う。
私は独立してまだ1年にも満たないが、独立して本当に良かったと思っている。様々な新しい経験ができ、新しいアイデアが生まれ、学びたいことがどんどん増えている。時間の大切さを認識するようになり、時間の使い方や仕事・生活・学習のバランスを取れるようになった。家族との時間も大切にできている。新しい人とのつながりも増えている。
会計士のキャリアとして、“独立”はあくまでも選択肢の1つに過ぎない。会計士としての進路を考えているのでれば、色々な会計士と会って話を聞いてみることが一番大事だと思う。

