時代の変化に対応していく柔軟性が組織を大きく強くする【第3回】
日本クレアス税理士法人/株式会社コーポレート・アドバイザーズ / 中村 亨
今回、特集でご紹介するのは、日本クレアス税理士法人|株式会社コーポレート・アドバイザーズ代表中村亨(なかむらとおる)さんです。
監査法人から、コンサルティング会社で活躍し、独立して会計事務所を設立。後に組織再編を経て、日本クレアス税理士法人、日本クレアス社会保険労務士法人、株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング、株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A率いるグループの代表に就任。
バブル崩壊後というタイミングで会計士となり、リーマンショックなどの危機を乗り越え、サービスの多角化と拡大で組織を成長させてきたその過程で、どのようなチャレンジや決断があったのかを伺いました。
本特集は、3回に分けて掲載いたします。第3回は、事務所の統合で組織の拡大を続け、今に至るまでです
01
この10年間の成長のキーワードの一つは「多角化」
リーマンショック後は「多角化」を急ぐ
辻本郷の本郷先生の影響で「会計事務所の統合」を進めると同時に急いだことは「多角化」です。
この2つのキーワードを、この10年間は常に頭に入れて経営をしてきました。
まず多角化についてお話をしますと、今ではグループに5つの事業体が存在しています。
ひとつは祖業であるコンサルティング。
これはIPOコンサルティング、J-SOX 、IFRS導入や収益認識基準の導入支援に加え、最近では株価算定、M&Aにおけるデューデリジェンス、PPA、或いは四半期決算の支援等幅広いメニューにお応えできる状態になりました。
もう一つが税理士法人。
リーマン後にグループの屋台骨の事業になり、オーガニックと後述する会計事務所の統合で規模拡大を図りました。メニュー構成も、通常の法人対象の税務業務に加え、連結納税、国際税務、移転価格、そして相続税や事業承継の対応にまで広がっています。
また、業種も一般事業法人に加え、クリニック、社会福祉法人、公益法人と幅広く対応できる体制になりました。
次に社会保険労務士法人。
「働き方改革」の追い風に乗り、現在急成長中ですが、給与計算代行、社会保険手続き代行、マイナンバーの保管業務、労務顧問、就業規則コンサルティング、そしてM&Aの局面における労務デューデリジェンスや労務コンプライアンス調査、人事評価制度と幅広く対応できます。
そして、M&A。
規模は小さいですが、少数精鋭で、依頼を受けた案件は必ず成立させることを目標にしています。
仲介業務をメインに、アドバイザー業務も行い、多様なM&Aのニーズに応えております。
さらに最近、日本クレアス財産サポートという会社を設立し、節税、遺言、不動産等のニーズへの対応の体制も整えました。
当社グループでは入社する社員は別々の会社に入ったという意識は比較的薄く、1つの会社に入ったけど5つの部門が違う、くらいの感覚で皆が協力し合い、お客様をよい意味でシェアする(ワンストップ)体制を徹底的に意識するようにと心がけています。
02
2つ目のキーワードは「会計事務所の事業譲受」
これまでの実績をお聞かせください。今後も積極的に拡大を進めていくのでしょうか
当税理士法人では、これからも積極的に「会計事務所の統合」つまり、「会計事務所の譲受」を行っていきます。
大前提としては、「特徴がある」事務所に限定しています。
例えば、地域でブランドを確立している、収益性が高いとか、規模感がある、何か特定の分野に強い、とか…一言でいうと“特長がある”ということでしょうか。
これまでの実績の代表的なものをお話しします。
2016年に大阪本部を開設していますが、医療分野に特化し、医療の分野では大阪で名高く規模の大きい会計事務所を統合したのです。これによって、東京本社の医療事業部と強いシナジーを発揮することができ、医療分野という新しい事業の柱を構築することができました。
最近では、2019年に富山県富山市の会計事務所を譲受しました。
(地域でのブランド力が強く、社会福祉法人会計に強みを持ちます)
また、2020年には群馬県高崎市の会計事務所グループを譲り受けました。
(地域でのブランド力に加え、ワンストップサービスを実現しているところが強みです)

人や文化が育っている組織を統合することは難しいのではないでしょうか
確かにそういった心配はあるかもしれません。
しかし、振り返ってみても、困ったことというのはないですね。
人や文化が既に育っている組織同士が統合するとなると、普通にいくとぶつかってしまいます。
まずは、私のやり方として、相手を受け入れることにしています。
また、地域に根付いている会計事務所は地域独自のノウハウを持っていますから、自主性に任せるというやり方をとっています。
統合の際には、「社名が変わる、電話の出方が変わる、名刺が変わる。あとは当面、何も変わらない」と伝えています。
それぞれの組織が持つ文化・ブランドは統合後も維持・発展するべきであると考えています。
東京本社のやり方を押し付ける、ということは絶対にありません。
この会計事務所の統合については、「Regional」と「United」の2つのキーワードをポリシーにしています。前者は「地域を重視する」ことを意味し、後者は「地域の意見を全体に反映し本社も発展する」ことを意味します。
従って、ホームページも自主運営していただきますし、それまでのやり方を続けていっていただくことを前提にしています。求められれば人材の派遣や、マニュアルやチェックリストの擦り合わせ、営業の支援等に応じることで地域での存在感をさらに増していただければと思いますが、本社のやり方を一方的に押し付けるということはしないようにしています。
地域には地域の事情がありますので、それを大事にしたい、ということです。
当グループは、スタートはコンサルティング会社でしたが、税務をメインとする事業に転換し、お客様の要望に応える形で給与計算や社会保険手続き、事業承継や相続といった領域に事業を多角化してきました。「事業の多角化」と「会計事務所の統合による組織の拡大」は、お客様に必要とされる限り、そしてそのためにグループの社員が成長をし続ける限り今後も続けていくと考えます。
多角化についていえば、次は、やはりリーガルファーム(弁護士法人、司法書士法人)の設立が必要だと思っていますし、会計事務所の統合は良いご縁を頂けるお相手は常に丁寧にお話をさせていただき実現させたいと思っております(これは税理士法人に限らず、社会保険労務士法人でも同じです)。
03
人に助けられ、人を育てる。資格と仕事が分離している時代だから言えること
社員の成長とありますが、経営者として今後の人材育成の戦略はお持ちでしょうか
一番に思うことは、私がとても部下に恵まれているということです。
彼や彼女たちが、私がもっている組織感(少し大げさに言えば世界観でしょうか)を実現させてくれていると思っています。
東京本社は、多角化していますので当然ですが、一つの案件(一つのクライアント)に、各部門のメンバーが混在して仕事をします。
一つの案件に、様々なメンバーが一丸となって取り組むことで、スピード感が維持され、共有力や展開力という組織力(私はCREAS力と呼んでいますが)が醸成され、組織を思う気持ちを皆がお互いに確認するというDNAが醸成されていると思っています。
人材育成の戦略というと、「人材投資は惜しみなく行う」があります。新卒採用も数年前に始めましたし、退職金制度も作りました。様々な福利厚生の取り組みも始めましたし、テレワークができるIT環境の整備、スマートフォンの会社支給率の向上、クラウドサービス導入による業務効率向上など、様々なチャレンジをしています。
また、人材を育てる上で大切なことは「曖昧力」だとも考えています。自分の理想と現実はかけ離れているもので、そのバランスをどうとっていくかです。例えば、品質管理は絶対重要ですが、自分の組織と監査法人を比べると、やはり、監査法人ほど徹底した品質管理は難しい。では、その差についてどう対峙していくか、落としどころはどこにあるのかを考えます。人に対しても、怒るときは怒りますが、最後は楽天的です。怒ってもひきずらないですね。いいところを引き出して、長所を伸ばすということを考えています。
採用にあたっても、色んな人材を採用するように心がけます。なんでもパーフェクトにできる人はいないものですから、能力にこだわりすぎずいいところを探しますね。組織にあった雰囲気の人というよりは違う視点を持っている人を採用したいです。
時代の変化に柔軟に対応してきたように見えますが、会計士にはそのような柔軟性が必要だと思いますか?
私自身、変化に躊躇しないということを、これまで心がけてきました。まずは、とにかく「Yes」ということ。これが実践できたからこそ、組織をここまで大きくできましたし、たくさんの人とつながっていくことができました。その私の経験から、会計士に限らずどんな人にも、まずは自分で選好みせずに目の前にあることを受け入れて、取り組んでいくことが大切であり、それは目標に近づく礎になると言いたいと思います。
そしてもう一つ。時代の変化というと、資格と職業感は大きく変わっています。
私が公認会計士を目指していた学生のころ、1990年ごろは公認会計士の資格を取ることは監査法人に就職することとイコールでした。つまり、資格と職業が一致していました。ですが今は、資格を取った後の選択肢が多様にあります。就職先としては事業会社やベンチャー企業、外資系など様々に考えられます。監査法人に就職するためのツールだった資格は、時代の変化を経て今は「自分がやりたいことを叶えるためのツール」になっています。
今後の社会では、時代の変化に対応する気持ちを持ち、自分がやりたいことをとことん突き詰めていける会計士が活躍するのではないでしょうか。

(了)
プロフィール
中村 亨(なかむら とおる)
日本クレアス税理士法人/株式会社コーポレート・アドバイザーズ
1988年 :大阪府立北野高等学校卒業
1993年 :早稲田大学政治経済学部政治経済学科卒業
1993年 :公認会計士二次試験合格・監査法人トーマツ(当時)入社
1996年 :公認会計士登録
2002年 :中村公認会計士事務所設立
後に組織再編し以下となる。
日本クレアス税理士法人、日本クレアス社会保険労務士法人、株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング、株式会社コーポ
レート・アドバイザーズM&A
日本クレアス税理士法人/株式会社コーポレート・アドバイザーズについて
会計・税務のみでなく、相続・事業承継、人事労務・給与計算、労務相談、M&Aや助成金の申請支援など、クライアントの企業活動に必要なサービスをワンストップで提供。会計士、税理士、社会保険労務士、医療コンサルタントといったメンバーで構成されるプロフェッショナル集団。