東京CPA会計学院が支持される理由。高い合格率だけじゃない、個性的な教育法とは
学校法人東京CPA会計学院 / 国見 健介
今回ご紹介するのは東京CPA会計学院の理事と講師をされている国見健介(くにみ けんすけ)さんです。
国見さんはカリスマ講師として有名ですので、授業を受けたことがあるという方も多いと思います。大学3年生で公認会計士試験に合格し、そのまま東京CPA会計学院でチューターのアルバイトを始めました。大学卒業後に某大手監査法人に勤務したものの、教育の魅力に惹かれて再び東京CPA会計学院に戻り、現在まで多くの合格者を輩出しています。独特の教育理念や、会計教育業界の課題、これからの会計士に求められるスキルなど、多くの人材を育ててきた国見さんにお話を伺いました。
01
CPA会計学院の独特の教育理念と、オープンな組織風土
長期的な視点でマネジメント力を発揮
国見さんは東京CPA会計学院の理事と講師を兼任していらっしゃいますが、現在の仕事内容について教えていただけますか?
講師としての業務に4割、組織マネジメント業務に4割、新規事業に2割の配分業務を行ってると思います。
講師としてのプレイヤー業務は、教材開発、講義、質問・相談対応などにほとんどの時間を費やしています。
マネジメント業務は、組織が上手く回っていくために必要な業務をすべてやっているイメージです。組織ビジョンの策定、組織文化・風土の形成及び浸透、事業戦略の立案、投資意思決定、講座(商品)体系の改善、校舎運営の改善、人事評価、財務業務、外部企業との交渉・新規契約の締結、人材育成・人材採用など、組織が成長していくために必要なことはなんでも実行することを意識しています。
また、新規事業は、10年後、20年後の理想の形を見据え、必要と感じるものを試行錯誤しながら取り組んでいます。
プレイヤー業務とマネジメント業務はどちらか一つだけでも大変だと思うのですが、両立させるために意識していることはありますか?
20代のうちはプレイヤーとしての能力の向上に主に取り組み、30代はマネジメントとしての能力の向上に重きを置いてきました。プレイヤーとして成果を出すことと、組織やチームとして成果を出すためのマネジメント能力は全く異なります。
キャリアを考える際に、プレイヤーとして成長したいのか、それともマネジメントとして成長したいのかを明確に意識することが必要だと感じています。また、短期的に重要なことと長期的に重要なことへの時間配分も意識するようにしています。
個人的には、今後はマネジメント能力の向上が組織にとってますます重要になると考えているため、プレイヤー業務や短期的に重要なことは徐々に減らし、マネジメント業務や長期的に重要な業務の割合を増やしていきたいと考えています。たとえば、組織の各メンバーがやれることを100から120に増やすための環境作りや、組織メンバーの新規採用、組織を目指す方向に正しく導くこと、様々なチャンスの種を蒔くことなどに時間をかけて取り組んでいきたいと思っています。
一方で、組織を導くためには自分が一番成長しないといけないと感じているので、常に危機感を持って臨んでいます。
将来活躍し幸せになれる人材の育成
公認会計士試験の平均合格率11%と比べて(『平成29年度公認会計士試験合格者調』より)、東京CPA会計学院は44.8%と非常に高いとお聞きしています。このような結果を出すために、他の専門学校とどのような差別化を図っているのでしょうか?
合格はもちろんですが、合格後に、幸せに生きていて、かつ、社会で活躍できる人材を育てることを目標にしています。そして卒業生の皆さんに、CPAのOBであることを誇りに思ってもらえるような教育機関を目指しています。
教育業界は資格受験業界に限らず、“点”での成果、資格受験の学校なら合格がゴールになっていて、本当に幸せに生きて社会で活躍しているのかという、卒業生の将来には関心がない教育機関が多いと感じています。ですが本当の教育とは、10年後、20年後に社会で活躍して幸せに楽しく生きていけるよう人材を一人でも多く輩出することのはずだと信じています。今の教育業界でそういう教育機関や教育者は多くないので、そこを本気で目指しているところが他の教育機関との違いの一つだと思っています。
当学院にはOB会があって、各分野で活躍していて何か課題にぶつかったとき、講師やOBに相談できるネットワークを構築しています。今後も卒業生の方に貢献し続けられるような活動を強化し、卒業後も長期的な繋がりができるような学校にしたいと思っています。
現役受講生だけでなく、卒業後のOBにも様々な貢献をし続けれるパートナーであり続けたいです。

公正で開かれた組織への改革
マネジメントをする上で、気を付けていることはありますか?
1人1人のメンバーが、仕事を楽しみ、仕事を通じて成長し、心からCPAのメンバーでよかったと思ってもらえることを大切にしています。
若手社員のやる気を引き出すために、経営者が若い頃の苦労話をすることがありますが、この方法には土台から欠点があると思います。
どの会社でも、創業者やマネジメント層は、経営者としての大きなメリットや待遇があります。ユニクロの柳井さんがあんなに頑張れたのは、創業者として得られるものがあったからだと思います。新入社員がどんなに頑張っても創業者と同じものを得られるわけではありません。そのため、創業経営者と同じような道を歩んでほしい、同じような意識を持ってほしいと期待しても中々難しいのが現状です。
そのような状況の中で、従業員一人ひとりがやりがいを持ち、組織全体のメリットになることに一致団結して取り組めるようになるためには、各メンバーにとってメリットのある組織ビジョンと文化を浸透させることが必要だと強く感じています。そのことを強く意識しながらマネジメント業務に取り組むように心がけています。
国見さんは理事として、どのようなビジョンを持って組織運営に取り組んでこられたのでしょうか?
私自身が新入社員になったつもりで、骨を埋めて頑張ろうと思えるような組織像をイメージしながら、組織運営に取り組んできました。そして、平等でオープンな人事制度、風通しの良いフラットな組織、一人ひとりが権限と自由を与えられている組織にすることが重要だと考えています。
まず人事制度ですが、安定志向を続けると組織は弱くなるので年功序列は採用せず、年齢に関係なく結果から公正に人事評価をしています。
また、組織の方向性の中で正しいと思うことにはどんどん取り組めるような、風通しの良い組織を目指しています。私がA案と言ったからA案で決定するのではなく、B案やC案など、組織が良くなるための色々なアイデアを提案してもらうことが重要です。そのためには、役職の違いはありますが、一人ひとりがみんな人として平等という認識も大切にしています。
さらに組織の風通しが良くなるためには、情報がオープンになっていることが重要になります。マネジメント層だけが情報を握っている組織は良くありません。仮に経営者だけが、重要な情報を知り多額の報酬をもらって従業員が報われないとしたら、従業員が組織全体のことを考えようとは思わないはずですし、そもそも全体的な視点で物事を判断することもできなくなります。また、情報が見えないと誤解が生じたり、勝手な想像が働いたりして、メンバーが働いて楽しいと思えないはずです。
そこで、プライバシーに関することなどの一部の情報を除き、基本的にすべての情報が全メンバーに公開されていることを実践しています。私の給料からマネジメントが議論している内容もすべて公開していて新入社員でも知ることができます。すべての情報をガラス張りの状態にすることで、メンバーにとって働き甲斐のある組織ができたと思います。
02
公認会計士試験受験指導とソフトスキル育成のための教育
“幸せ”の定義
東京CPA会計学院では、楽しく幸せに生きる人を増やすことを教育理念としていますが、具体的にどのようなことですか。受験生にとっては、合格がイコール幸せではないのでしょうか?
ほとんどの人にとって、楽しく幸せに生きることが人生の目的のはずです。しかし、幸せになるための手段を目的だと誤解している場合が多いと感じます。例えば、学歴、会計士試験合格、仕事、結婚、プライベートなどは、すべて楽しく幸せに生きるための手段にすぎませんが、いつの間にかそれらが目的になってしまう危険があります。
本当の幸せとは、それらを使ってどのくらい周りの人に貢献するかということだと考えています。
人に貢献することが幸せと言われましたが、それだと幸せになるのは相手であって自分自身ではないような気がしますが。
貢献すると、相手から感謝してもらえます。すると、自分はこの人にとって重要な人間なのだという自己重要感や、自分は必要とされる人間なのだという自己肯定感を感じることができます。どんなにお金を持っていても、どんなに権限を持っていても、周りの人から感謝されていないと楽しくないと思います。
多くの人に貢献し、役立ち、感謝される。これが幸せの大きさに繋がっていると思います。
貢献することは他人の幸せのために行動しているように見えて、実は自分の幸せにつながるという意味なのですね。
私は、純粋な利他主義の精神というのは存在しないと思っています。すべての行動は、自分が幸せを手に入れる目的のために他人に貢献しているのであって、本当は他人のためではなく自分のために行っていると感じています。
ボランティアをすれば感謝されて嬉しい気持ちになれますし、様々な学びや気付きもあります。利己主義を突き詰めた結果が利他主義に繋がっているのではないでしょうか。
また、親から子どもへの無償の愛といいますが、実は無償ではないと感じています。親は昼夜を問わず赤ちゃんや子どものお世話をしますが、何の見返りもなく一方的に貢献しているわけではなく、赤ちゃんや子どもがとても可愛くて、その笑顔や行動から非常に大きな幸せを親に提供してくれるので、与えてもらった幸せのお返しをしていると考えています。
利他主義や無償の愛という、世間一般に美しいと思われるものではなくても、自分の欲や幸せを貪欲に追及していく結果、周りの人にいっぱい貢献をしようと思う人が増えたら最高ではないでしょうか。
幸せをこういう定義で捉えるのは良い考えですね。自分も周りに人も幸せになれます。
自己重要感や自己肯定感を間違った方法で満たそうとしてしまうと、悪循環にはまります。例えば、お金や権力で優越感を感じようとしたり、自分より弱い立場の人に偉そうにふるまったりすることで、満足しようとする人、また、悪事を働くことで注目を集めようとする人がいます。
ですが、ブランド品を身に付けて美しく着飾って外見を装っても、瞬間的には自己肯定感が満たされるかもしれませんが、認められたのはあくまで表面的なものだけなので、時間が経てば幸福度は下がってしまうことがほとんどです。
また、悪事などで注目を集めても、偽物の注目を集めているだけなので幸せには繋がりません。
見た目や間違った行動で注目されるのではなく自分の内面が成長して、人に貢献して感謝されることで、本当の満足感を満たすことができます。そのために、「ビジョンを持つ」、「チャレンジをする」、「向上心がある」、「物事の考え方のレベルが高い」、「周りの人と良好な関係性を築ける」ような人材を教育し、彼らが周りの人にどんどん貢献して感謝してもらい幸せになってもらいたいです。
国見さんご自身は、周りの方にどのような貢献をされていますか?
自分は、家族、組織メンバー、受講生の皆さん、OBの皆さん、友人の皆さん、一人ひとり貢献できる形は異なりますが、自分の能力を磨くことで一つでも多く貢献できるようになりたいです。
その結果として、自分が多くの人からサポートを受けられるようになれば、自分だけでなくより多くの人がさらに幸せになれます。
貢献の内容は相手によってそれぞれ異なります、必要とされることをより多く貢献できる様に自己研鑽をし続けたいと思っています。

社会で活躍するために必要なソフトスキル
合格者の方のご意見では、東京CPA会計学院の良かった点は、講師に質問しやすい環境、テキスト、適切なフォローなど様々あげられています。その中で、国見さんが特に重視していらっしゃることは何ですか?
講義と教材のクオリティーの高さはもちろん必要ですが、最も重要なのは適切なフォローだと思っています。
会計士受験を登山に例えるなら、受験生は合格という頂上に向かって長い道のりを登り切らなければなりません。教材や授業を分かりやすくすること、自習室がいつでも使えたり、過去の授業をいつでも見て復習できるようにしたりすることは、登山道を整え登りやすくしているイメージです。
ですが、いくら道路が整備されていても、頂上しか見えない濃い霧の中を進むのは恐怖が伴います。反対に、いくら道が険しくても視界が開けていたら意外と登り切れるものです。
個別フォローでは、これから進む道が濃い霧に覆われていて、迷い不安になっている受験生に対して、「この時期はこういう勉強をしたほうがいい」とか「途中でくじけそうなときは、こういうふうにイメージしたら乗り越えられる」と霧を取り除いたり、霧の払い方をアドバイスしています。勉強方法や物事の捉え方、メンタルコントロールなどについても色々伝えることが合格にとって、合格後の活躍にとってとても大切になります。
そのため、個別フォローで伝えた内容は合格だけではなく、合格後に自分で進む力としても大きく役立ててほしいです。
講義では、置かれている状況も課題も異なる個々の受験生に合ったアドバイスはできないので、個別フォローで伝えていくことの重要性は高いと認識しています。
受験中は合格することだけで精一杯だと思うのですが、合格した後のことまで考えて指導するというのは珍しいですね。
試験なら科目とやることが決まっていますが、社会に出れば教科書もなければ科目数も決まっていません。合格した後の方が道は見えづらくなります。受験時代から、自分で霧をとって進む力、課題を解決して未来を想像していく力、モチベーションを保ち進み続ける力を身に付けることが大事だと思います。
個別フォローでは、受験知識に関することだけではなく、社会で活躍するために必要なことも教えてもらえるのですね。
大切なのは知識を教えることと同じくらい、ソフトスキルを身に付けてもらうことです。ソフトスキルとは、一流の人が社会で活躍するために備えている能力、自分自身の内面を磨く能力と捉えています。具体的には、目標設定能力、課題分析能力、目標を達成するための計画の立て方、課題解決能力、壁にぶつかったときの乗り越え方、マインドセットの持ち方、人を巻き込みながら良好な関係を長期的に築いていく力などです。
受講生の方にソフトスキルの指導するためには、我々自身もソフトスキルを身に付けていなければなりませんので、講師一人ひとりが日々スキル向上に努めてないといけないと感じています。

03
変わりゆく日本の教育業界
多様な教育が求められる時代へ
現代の日本の教育とこれからの教育について、どのようにお考えですか?
日本の教育は、いまだに明治維新後から戦後の高度成長期にかけて作られた教育システムのままです。具体的には、知識を詰め込み、答えのある問題の解答を素早く処理できる能力を育てる教育です。これは、高度成長期に必要とされた、指示に従って効率よく業務をこなす人材を大量生産するのにはとても有効で、この教育制度のおかげで日本は欧米の列強諸国と肩を並べるような成長ができました。
しかし、時代は変わり、これからは自ら目標を設定し、答えのない課題に対して自ら仮説を立て、未来を想像する力が求められるようになります。その時代の変化に合わせて、日本の教育機関全般も大きく変わっていかなければなりません。
また、日本は学校の先生の社会的地位が極めて低く、リスペクトされていません。その原因は、今の若者が求めている能力という側面において、現在の先生が教えられていないという要因が多いと思います。これからの時代に求められる力を教えることができる人材が教育業界に入ってくることが不可欠です。
以前、経営者をしている先輩会計士の方から、「教育は引退してからやればいい。若いうちはビジネスをしなさい」と言われたことがあります。また日本では、公務員は安定しているからとか、研究をするために仕方なく教壇に立っているとか、情熱を持たない先生を多く見かけます。
ですが、これでは日本の教育は良くなりません。日本の教育を良くするためには、本気で教育に取り組む人を増やすことや、教育に携わる人たちの意識改革が急務です。
教育者自身が、変化に対応していく人材でないといけません。自分で目標を設定し、答えのない課題に取り組み、そこから多くを学び、成長していくという、これからの時代に求められる人材になっていかないといけないと感じています。
子どもの人数が減少して、学生から選ばれないと教育機関は生き残れない時代になってきたと思うのですが、教育機関はこれからどのように変わっていくべきなのでしょうか?
多様性が求められている時代で、今後は教育機関にも多様性が必要です。教育機関は知識を教えるだけでなく、物事をポジティブに考える方法、課題との向き合い方、周りの人との良好な関係性を築く方法、レールがない道を進んでいく方法など様々な教育が求められる時代になると思います。
学生には、学校を偏差値で選ぶのではなく、どう生きたいか、そのために何を学びたいか、どの大学のどの学部ならそれが可能なのか考えて選ぶ時代になっていきます。
今の日本の教育は、金太郎飴のようにどこの大学に行っても大きな違いがありません。ですが、英語を一切やらない大学、政治家だけを育てる大学、様々な思想を持つ大学、ひたすら数学だけ学ぶ大学、教授が全員ビジネスマンである大学、世界中を訪問し続ける大学など、教育機関にも強烈な個性が求められているのではないでしょうか。
ご自身が受験勉強をしていた頃と比べて、資格の専門学校の教育に求められるものに、何か変化は感じますか?
東京CPA学院は、会計士受験の専門学校の中で一番歴史のある学校です。理事長が、名前を覚えられる人数しか教えないという生粋の教育者で、20年前までは1クラスだけの寺子屋式の学習方法でした。
私はその環境で良い教育を受けました。ですが、今の若い人はそういう教育は求めていません。社会に求められている本物の教育をするという根本の理念は譲れないものとしつつ、時代に合わせて変えるべきところは変えていく必要があります。
これからの時代に求められてる、考える力、それを伝える力を備えた専門家を育てることが求められていると思います。

これからの教育機関は変化に対応できる人材を育てることが必要
会計士を取り巻く環境は変化しつつありますが、専門学校や会計士業界の課題についてどのようにお考えですか?
会計・財務・税務の知識は社会に必要とされ続けるものですし、専門学校も同じです。ただ、ビジネスマンに求められる能力は変化しているので、教育機関も教える内容や教え方を変えていかないといけません。
さらに、知識の活かし方はとてつもないスピードで変化していますので、知識を社会の課題解決に活かせる人材、活かし方も変化させられる人材を育てることが必要です。単に知識を教えるだけの教育機関は自ずと淘汰される時代を迎えています。
会計士業界全体の課題としては、弁護士や医者などに比べると若年層への知名度が低いので、公認会計士という職業をもっと知ってもらうことも必要だと思います。
教育業界としては、会計業界に限らず、優秀な教師が少ないことと、画一的な教育が行われすぎていることが課題の一つです。社会で活躍できる優秀な人材が教育業界に多く参加してくれるようになると日本の教育は大きく変わると思います。
AIが普及して、会計士業界はどのように変化していくと思いますか?
明治維新から150年ぐらいかけて起きた変化が、これから50年で起きることになります。そして、変化を恐れて不安になる人と、新しいことにチャレンジする人に分かれていくことになるでしょう。
マスコミは数字を稼ぐために不安をあおるニュースを流していますが、産業革命しかり、インターネット革命しかり、新たな革命が起きたおかげで生活は以前より便利になりました。革命が起きると今ある仕事の半分はなくなるかもしれませんが、同時に新しい仕事も生まれます。そういう点では、凡人にとって革命はある意味チャンスでもあります。
AIに対して悲観的になったり不安になったりするよりも、変化に対応する力を身に付けてチャレンジする生き方をする人が増えたら良いと思います。
ただ、AIの進展により世界的に多くの人が失業して格差が拡大するリスクがあります。それをどうしていくのかは、国家・世界レベルの課題ですので、まずは、自分自身がAIと共存できる人材になることが大切になると思います。
テクノロジーの進化で学校も変化するのでしょうか?
20年後のITが進んだ学校では、例えば一人のカリスマ的な算数の先生が授業をすれば、各学校で本当にその先生が授業をしているかのような映像を流すことができるかもしれません。今は教室ごとに先生が必要ですが、算数の知識を教えるティーチングの先生は1人で良くなるのです。
ではその他の先生が不要になるかというと、かわりに知識を分かりやすく教えてくれるコーチングの先生が必要になるでしょう。悩みを聞いて相談に乗るカウンセリング的な仕事が将来増える可能性が高いと思います。また、一人ひとりと向き合い、ソフトスキルの習得をサポートするニーズも必ず高まっていくと思います。
教育者は単に知識を教えればいいという時代から、ソフトスキルも含めた人材育成ができないといけない時代になると予想しています。

多様化する時代の組織作り
今後どのような組織を目指していくのか構想をお聞かせください。
1人1人が120%力を発揮できる自由な組織を目指しています。
常勤の講師もいれば、監査法人や他の仕事をしながらの人もいて、組織への関わり方は十人十色です。ただスポーツチームが一致団結しているからこそ各プレイヤーが個性を発揮できるように、同じゴールを目指す点にはコミットしてもらいながら、ゴールの達成の仕方や組織への関わり方については各自が個性を強く発揮できるような組織作りを目指しています。
自由に個性を発揮できる環境や、積極的に主体的にアクションすることが推奨されている組織は、従業員のモチベーションが上がり、強い組織を作ることができます。反対にやる気がうまく引き出せていない組織では、課題に気付いても面倒くさいからと見て見ぬふりをする従業員が多くなり弱い組織になってしまうので、そうならないように気を付けなくてはなりません。
他の専門学校では全国展開をしているところもありますが、東京CPA会計学院ではこれから全国展開を目指す予定はありますか?
教育機関はスケールメリットが逆効果になる業界です。トヨタのような自動車メーカーなら、規模が大きくなれば高い品質のものを大量に作ることができるので、スケールメリットが享受できます。ところが教育はマンツーマンシステムです。テニスで一流のプロになりたい人が専属コーチについたとしても、専属コーチが1,000人に教えたら効果は薄まってしまいます。
では、人数が少ないほうがいいのかというと、学校教育と違い予備校は公的な補助金がもらえるわけではないので、組織を動かすための資金を自ら確保しなくてはなりません。50人しかいなければ教材の開発や個別フォロー体制の維持、必要なITの整備などの品質を高めるための必要な投資すらできなくなってしまいます。
そのため、高い品質のサービスを提供するために必要な規模までは拡大を継続しますが、拡大自体を目標としているわけではないので、現時点では全国展開の予定はありません。
最近はどこに行ってもネット環境が整っていて、受講形態も多様化しているのではないでしょうか。ちなみに、インターネットと教室で受講するのとでは、どのような違いがありますか?
インターネット教育は知識を学びたいだけならすごく良いと思います。ですが、ソフトスキルを磨くという点では、インターネットでは限界があります。
今後さらにインターネット教育の普及が見込まれますが、知識だけ学びたい人はインターネット教育、人間性も大きく成長したい人はリアル教育という具合に、二極化していくだろうと考えています。
またインターネットも品質の高くないものを廉価で手に入れるか、高品質なものを高価に手に入れるかの二極化が起こるでしょう。
私は、受講生の方が講師とじかに話すことは非常に重要だと考えているので、個別フォロー体制のさらなる充実や通信教育の学生の方も電話でいつでも相談できる体制を整えています。IT時代こそ、ITとリアルの融合が重要という認識をしています。

04
時代の変化に合わせて会計士に求められるもの
リーダーシップとフォロワーシップ
これから会計士になる人が身に付けておいたほうが良いスキルはありますか?
会計士に圧倒的に足りないのはソフトスキルです。リーダーシップ、フォロワーシップ、人を巻き込む力など、会計士は人に関わるスキルが足りないと感じています。
公認会計士、医者、弁護士などの士業は、専門知識などのハードスキルは必須ですが、ハードスキルさえ磨いていれば生きていける時代が長く続いたため、ハードスキルに頼りすぎている感があります。特に公認会計士は、会計、税金、監査、エクセルの知識などのハードなものに依存しすぎる傾向があります。
反対に、会計士業界でソフトスキルが高い人はまだ少ないので、ソフトスキルのある人が、多方面で活躍しているのが現状です。これからのIT社会はますますソフトスキルが重要になることが予想されるので、ソフトスキルが高い会計士が増えてくると楽しくなると感じています。
具体的にどのようなソフトスキルが求められていますか?
大切なのは、みんなにとって望ましい目標を設定し、その目標を実現していく力です。そのための一つの重要項目は、リーダーシップとフォロワーシップを磨くことだと思います。つまり、人を巻き込んで、チームとして未来を創っていく力です。
組織には、部下を統率していくリーダーが必要ですが、リーダーを支える優秀なフォロワーも必要です。また、ある場面ではリーダーだけど、別の場面ではフォロワーになることもよくあります。リーダーシップとフォロワーシップは、日々どちらの内容も混ざり合って求められるので、リーダーシップとフォロワーシップをセットで学ぶことが必要です。
また、組織全体のことはリーダーに求めがちですが、フォロワーが実行しないと目標は達成できません。その点でも、両者の力を磨くことが重要になります。
リーダーシップとフォロワーシップの身に付け方が分からない人も多いと思います。何かコツはありますか?
身に付けるためには、理屈を学んで実践あるのみです。
素人でも会計士受験を始めて3年くらい講義で理屈を学び、問題集や答案練習で実践練習を反復すれば、一流の専門家の入り口に立つことができます。リーダーシップも会計の勉強と一緒で、3年ぐらい必死で学び実践すれば身に付けることができます。
リーダーシップが苦手な人は、リーダーシップに関する本を読んだり、リーダーシップ力がある人に意識していることを聞いたりして、その中から必要な20個の要素を日々のアクションプランに落とし込んでみると良いと思います。そして、あとは人を巻き込みながら、実践を通じて学び続けるしかありません。
その過程で沢山失敗をを繰り返しながら、徐々に身に付いていくと思います。
私は、リーダーシップ以外にも何か課題を感じたら、関連する分野の本を5冊ほど読むようにしています。各分野の専門家の本を読んで実践しながら周りの人にも相談します。そして実行してみます。会計士は3万人しかいないのに、努力したら上位3万人に入れたのですから、ソフトスキルでも努力すれば上位の力を身に付けられるはずです。
監査法人でリーダーシップを求められる機会はあまりないと思うのですが、監査法人で働きながらリーダーシップを身に付けるとしたら、どのような方法が良いと思いますか?
監査法人では周りを巻き込まなくても生きていけるし、リーダーシップを磨かなくても生きていけます。でもこれからの時代は、リーダーシップなどの対人スキルを磨かないと選択肢が狭まり、リスクが高まると感じています。
どんな組織にいてもソフトスキルは磨けます。たとえばコミュニケーション能力を磨きたいのなら、クライアントやチームメンバーから信頼されて何でも話してくれるような関係になりたいと目標を立て、実践し続けるだけでもコミュニケーション能力は違ってきます。
人間の脳は、アンテナを張っていない情報は入ってこないようにできています。たとえば、駅から初めて予約した飲食店まで地図を見ながらいったとき、途中にあった自動販売機の場所をすべて言える人はなかなかいません。目に入っているけどスルーするように脳が仕組まれているのです。もし喉が渇いていてアンテナを張っていれば覚えているかもしれません。
リーダーシップなどのソフトスキルも同じで、アンテナを張っていればリーダーシップ力の高い人が目に留まり、情報が日々入り続けます。なんとなく会計を得意にしたいと思って会計士試験に受かる人がいないのと同じで、明確な画像度の高い目標設定が必要です。
そのため、監査法人に勤務している人も、どうすれば自分のチームをより良く導けるか、クライアントさんと協力関係を築いてより質の高い監査を実行できるかなどに、周り人と協力しながら取り組み続ければ、どんどん磨かれていくと思います。また、組織外のプライベートな活動でも、人を巻き込み動くことで磨くことも可能です。
トレーニングをして努力すれば身に付けることができるので、今できていなくても可能性を諦めず磨いていってほしいです。
AIで会計士業界は変わりつつありますが、これからの会計士はどのような人材が求められるのでしょうか?
AIを不安がるようなマインドでは、プロフェッショナルの道はきついと思います。
安定を求めて解雇されないからという理由で、公務員を選ぶ人がいますが、時代が変化すれば10年後に解雇されることになるかもしれません。安全なところに逃げるのではなく、自分の能力を上げて環境に変化に適応できる生き方をしないと、これからのような変化の早い時代は飲み込まれてしまうリスクが高まってしまいます。
会計士業界もAIで変わりつつあります。変化を悲観することなく、AIがやれることはやってもらい、自分たちはAIができない分野の価値の高い仕事を開拓していこうというマインドの人が求められていると感じます。

失敗を恐れず結果を出す
日頃から会計業界を見守っている先生の立場から、キャリア形成について悩んでいる会計士の方に、何かアドバイスをいただけますか?
キャリアの前に、まずは、どんな人生を送りたいか、どんな人になりたいかという、人生の夢やビジョンを考えて欲しいと思います。会計士もキャリアも、そのための手段に過ぎません。最高に楽しくて幸せな人生を送るために、まずは自分がどう生きたいのかを考え、その実現に必要なことをキャリアも含め、どんどんチャレンジしてほしいです。
自分の夢に近づくためには、失敗しても諦めずチャレンジすることが必要で、失敗を恐れないマインドが大切です。ですが、ここに日本独特の難しさがあって、失敗はいけないもの、避けるべきものだとされています。海外だと、何度も失敗しないと成功しないのだから失敗は良いものという風土があるのですが、日本は違います。
日本人は失敗が悪いものという価値観が浸透しているため、失敗したくないからチャレンジをしないという悪循環があると思います。失敗しなければ、成功のために必要なことを学ぶこともできません。特に会計士合格者はプライドが高い人が多いと思います。結果として、今できる範囲のチャレンジしかしないので、成長の可能性が狭まってしまう恐れがあります。
人生の夢やビジョンに向かって、失敗してもチャレンジし続けることが必要なのですね。
フィギュアスケートの羽生選手や、メジャーリーグの大谷選手がここまで成長するまでに、どれほど多くの失敗があったか想像してみてください。多分我々凡人では想像できないくらいの多くの失敗を経験しているはずです。
しかし、我々は彼らの失敗の多くを知りません。それは、他人は失敗には興味がなくて、成功しか見ていないからです。本人は50回も失敗したから格好悪いと思っているかもしれませんが、人は成功した回数でしか評価しませんので、50回成功していたら、その50回の成功だけを見てくれています。
一番良くないのは失敗を恐れてチャレンジしないことです。何もせずゼロ勝ゼロ敗の状態よりも、50勝950敗の方が良いと信じています。結果を出す人は、成功の10倍、20倍は失敗していますが、失敗しないと成功もないことを理解し、失敗をポジティブに捉えているのです。
ゲーム―オーバーになったら、何回でもやり直せばいいのです。敵が強かったら、レベルを上げて、また倒しに行けばいいのです。
そういうマインドセットを大切にし、今できないことに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
専門学校で教育に携わりたいと思っている方もいると思うのですが、そういう方に向けて、何かメッセージはありますか?
教育は人の人生に影響を与える機会が多い職業です。そういうことにやりがいを感じる人は、教育業界は楽しいかもしれません。
ただ自分の理想を突き詰めていくと、教育以外のどの分野でも大きな壁が100個くらい出てきます。教育なら、文部省、教授会、教育委員会、保護者の壁、教える側の人材不足などがあります。教育業界は、マスコミや金融に比べれば壁は少ない。その教育業界よりも利害関係者が少ないのが会計士業界です。関係当事者の合意ができたらすぐ変われる業界です。
どこの業界でも多かれ少なかれ壁がありますが、好きなことでなかったら壁にぶつかったときに諦めてしまうので、好きなことをやった方がいいというのが持論です。
好きなことだからこそ、壁にぶつかっても諦めずに進み続けれると思うので、是非、自分の好きなことに取り組んでほしいと思います。
教育が好きだと思って飛び込んで3年頑張ってみたけど、やっぱり会計の分野の方が好きだと思えば、いつでも会計の分野に戻れるのも、会計士の良いところだと思います。
是非、一度の人生ですので、好きなことにチャレンジして、楽しく幸せな人生を送ってほしいです。私もこれからも皆さんに負けないように、楽しい人生にするために、チャレンジし続けたいと思います!
プロフィール
国見 健介(くにみ けんすけ)
学校法人東京CPA会計学院
1978年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
大学3年で公認会計士試験に合格し東京CPA会計学院でチューターのアルバイトを始める。
大学卒業後、某大手監査法人に勤務を始めたものの、教育の楽しさに惹かれて東京CPA会計学院に戻ることを決意。
現在は理事として、講義・教材開発・広報・人事・総務・公認会計士講座統括・組織マネジメントなどを行う。カリスマ講師として多くの公認会計士試験合格者を輩出する。
講師業のかたわら、NPO法人リトル・ビーズ・インターナショナル監事、NPO法人accountability for change理事、NPO法人 ReBit 監事、株式会社京和工芸特別顧問を務める。
著書に、『公認会計士の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本』(出版元:秀和システム)。
学校法人東京CPA会計学院について
公認会計士試験ほか会計資格の受験指導を行う、会計資格の専門学校。財務会計・管理会計の法人向け研修や、実務スキル講座も実施。常任講師が学習前から合格まで個別サポート。平成29年度公認会計士試験平均合格率が約11%であるのに対して、東京CPA会計学院の合格率は44.8%と驚異的な合格実績を誇る(2017年度。東京CPA会計学院Webサイトより)。昭和43年渋谷区恵比寿にて『東京会計法律学院』創設。平成20年より『専門学校 東京CPA会計学院』に改称。中野区中野に東京本校及び学園本部、ほか水道橋校・早稲田校・日吉校・大阪梅田校。