まずは自己紹介をお願いできますか。

（伊藤）
　2011年夏、公認会計士試験に合格し、翌年２月から新日本監査法人（現EY新日本有限責任監査法人）で働き始めた。パブリックセクターで７年半監査業務に従事、30歳のときにエスネットワークスに転職し、３年間コンサルタントとして働き、2022年夏に独立して事務所を構えた。現在の業務配分はIPO支援と監査業務／税理士業務が半分ずつ。

（関根）
　大学3年時の2018年に公認会計士試験に合格、2020年4月、新卒でエスネットワークスに入社した。事業再生や震災で被災した地域の復興支援など、非正規雇用の期間を含め約２年間再生コンサル業務に従事、2021年６月から1年1か月、監査法人に出向し公認会計士取得に必要な実務経験を積んだ。
　エスネットワークスに戻ってからは、同社の経営企画部門に所属し、2023年12月にエスネットワークスの株式公開を実現した。上場後はフロント部門に復帰し、ファンド投資先企業に常駐し、投資先の経理部門の内製化支援を手掛けた。縁あってユアルートという物流領域を中心にロールアップを行う会社からオファーを受けたことから、2024年12月、エスネットワークスを卒業。現在はユアルートの取締役として働いている。

エスネットワークス入社のきっかけを教えてください。

（伊藤）
　もともと自分の事務所を持つという目標を持って公認会計士を目指した。合格したときは資格取得のための当然のルートとして、何も考えずに大手監査法人を選んだ。ただ、いずれは独立という目標があったので、監査法人に入った時点では漠然と30歳を一つの節目と考えてはいた。
　いざ30歳になってみると、独立する勇気が出なかった。というのも、監査しかやってこなかったから。独立前提だから事業会社の経理という道は全く考えず、どうしたら独立してやっていけるスキルが身に付くか考えた結果、出た答えがコンサルだった。
　それではどこのコンサルに行くか。いろいろ調べた結果、常駐支援でクライアントとともに課題を解決するという点に惹かれ、エスネットワークスに決めた。
　監査法人でもコンサルは経験したが、定期的に打合せをし、課題を抽出し、翌週までに解決しておいてくださいという手順で、まるで学校の先生が宿題を出すようだった。しかし課題は実際に手を動かすことで見えてくるのであって、机の上で抽出した課題はどこか焦点をはずしているように思えていたため、常駐支援に強く惹かれた。

（関根）
　公認会計士を目指そうと思ったのは高校時代。一般的な高校生は公認会計士という職業が存在すること自体知らないと思うが、偶然書籍で見かけて知っていた。目指した動機はずばり収入の高さ。育った家庭の経済状況もあり、将来はしっかりとした収入を得られる職業に就きたいと考えていた。文系職種の中で高い収入が望めそうな職業は何かと考えて、出た答えが公認会計士だった。
　大学3年の秋に試験に合格し、いざ就職活動となったとき、もともと監査がやりたいわけではなかったから監査法人、それも大手の監査法人は見なかった。試験合格者向けの就職説明会でひときわ目立っていたのが、当時エスネットワークスの社長を務めていた、創業者の須原伸太郎氏。早い段階から裁量が与えられ、リーダー的、経営者的に働かせてもらえそうな点に惹かれ、入社を決めた。

実際に入社してみて感じたことを教えてください。

（伊藤）
　とにかくスピード感が違うと思った。それに緊張感。最初に仕事で組んだメンバーが監査法人出身者で、「ここでは監査法人の10倍のスピードで働け」とアドバイスされた。
　というのも、常駐なので常にクライアントに見られている。監査法人では監査の成果物は1枚の監査報告書だけで、実際の監査作業をクライアントに逐次見られているという状況は起きえないが、ここでは違う。
　エスネットワークスの常駐は文字通り、その会社の社員が座っている島のど真ん中に席をもらって入る。たらたらやっていたらたちまちクライアントの信頼を失う。だからこそ皆が日常的な事細かなことから徹底的に効率を追求することで仕事のスピードアップを図る。その緊張感は監査法人とは比較にならないほど高いと思った。

（関根）
　最初に思ったのは裁量が大きいというのは嘘ではなかった、ということ。入社前の大学4年在学中にアルバイトとして働いたのが最初だが、学生アルバイトでもーメンバーとして扱われる。
　入社後は文字通り最初からプランニングを命じられた。エスネットワークスは営業担当者がおらず、営業は主にマネージャークラス以上のコンサルタントがやる。受注後はマネージャーを核に、若手2人を加えた3人でチームを組んで対応する。
　受注できているので、マネージャーはクライアントから一通りヒアリングを受けているし、ある程度とるべき方針も見えているが、あえてそれは明かさず同じチーム内の若手にプランニングをさせる。必要な情報は与えてくれるが、何をどうすべきかは若手に考えさせる。
　最初は当然何もできない。できない中で必死に考えて設計をする。マネージャーからダメ出しされ、修正してまた戻されるのを何度も繰り返し、何とか形になったところでクライアントに提示する、という手順になる。その後、現場で実行していくのも若手だ。

（伊藤）
　その方法でワークするためには、若手がマネージャーに正確に情報を提供するということが大前提になる。いくら百戦錬磨のマネージャーでも、誤った情報が上がってきたら正しい判断はできない。
　エスネットワークスは若手に全部任せるが、違う方向へ進んだ際は是正するなどフォローがある環境。失敗も許容するけれど、正しい情報を上司に伝えることが、エスネットワークスの若手にとって何よりも重要なミッションだ。複数人で常駐する場合には、マネージャーが事実を誤認する確率は低いが、当たり前だが各々が常にいっしょに行動するわけではない。マネージャーの外出中に起きたことなどは正確に報告しないとダメ。

エスネットワークスのコンサルの強みは何だと思いますか。

（伊藤）
　常駐とプランニングがセットだという点だと思う。常駐だからこそ発見できる本質的な課題というものがある。新たに課題を発見したら、それにあわせて臨機応変にゴールを変えていけることだと思う。
受注までの時点で話を聞く相手は基本、先方のマネジメント層だが、マネジメント層の視点と現場の視点が異なるというのはよくある。常駐開始後により優先順位が高い課題が出てきたら、そちらを先に解決しよう、となる。
　常駐せず、外からだけやっていると、あらかじめオーダーされたことでスコープしてしまう。エスネットワークスの場合、プランニングがひっくり返ることや、ゴールが変わったことで期間が延長になるというのは日常茶飯事だ。

（関根）
　私も常駐が最大の強みだと思う。中に入り込むからこそ、その会社にとって全体最適が何なのかを見極めることができる。
　例えばIPOに向けて経理を内製化したいというオーダーが来たとして、そこだけやるのが会計事務所のやる普通のコンサル。エスネットワークスのコンサルは、管理システムの選定や基幹システムとどう連携させるかなどを考え、会社全体として最適になる方法をアドバイスする。それをしないと、つぎはぎだらけの使いにくいものになってしまう。外からアドバイスしているだけでは、そこまで踏み込めない。全体最適を見極めたプランニングこそがエスネットワークスの強みだと思う。

（第２回へ続く）